2020年8月に出版された、『TOEIC L&Rテスト 壁越えトレーニング シリーズ』(旺文社)の3冊同時刊行を記念して、著者である大里秀介先生のインタビューをお届けします!
今回はコロナの影響もあり、オンラインでのインタビューをさせていただきました。
大里秀介先生と濵﨑先生「ゴールデンタッグ」で執筆されている本シリーズ。
Part 1-4(大里先生・濵﨑先生共著)、Part 5-6(濵﨑先生著)、Part 7(大里先生著) の3冊に分かれており、それぞれ 「診断テスト」で自分の“苦手=壁”を把握→「トレーニングカウンセリング」で学習計画を立てる→「タイプ別の攻略法」に沿って勉強する という流れになっています。
「壁越えトレーニング」の制作についてのお話や、大里先生のTOEIC学習歴についてなど、詳しくお話を伺いました。
Contents
1.「壁越えトレーニング」は、2人のアイデアを融合し合いながら作り上げた
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『TOEIC L&Rテスト 壁越えトレーニング Part 1-4』(旺文社)
『TOEIC L&Rテスト 壁越えトレーニング Part 5-6』(旺文社)
『TOEIC L&Rテスト 壁越えトレーニング Part 7』(旺文社)
English Study Cafe編集部 (以下、ESC):「壁越えトレーニング」の発売、おめでとうございます!
大里 秀介さん(以下、大里):ありがとうございます。
ESC:今回は、大里先生と濵﨑先生のご共著でしたね。「ゴールデンタッグ」とも称されるお二人ですが、実際に本を作ってみての感想をお伺いしたいのですが。
大里:いろいろと読者目線での攻略法を詰めるだけ詰め込んだ!という充実感が多いですね。
濵﨑先生とは、本当に気心知れた仲で、講師としてもそうですし、友人としても以前からよく一緒に飲みに行く仲なんですよ。
ESC:10年以上の仲だとお聞きしてます。
大里:はい、なのでお互いストレスなく、自然にお互いのコンセプトも共有でき、気持ちよく仕事できたかなと思います。
僕は理系の人間なので、TOEICの問題についても、フレームワークに当てはめて論理的かつ計画的に物事を考えたり、いろいろと提案したりすることが多いんですけれども、濵﨑先生はいつもそういった僕の提案を受け止めてくださって。
濵﨑先生といままで二人でシリーズ本を書いたことはあるのですが、今回の「壁越え」のように共通のコンセプトで本を作り上げるのは初めてだったので、「うまくいくかな?」と思いましたが、結果的にそんな心配は1mmも必要ありませんでしたね。
最初のコンセプトの打ち合わせから、お互いのアイデアを融合し合いながら作り上げることができました。
不思議な話、妥協をまったくすることなく、それでいてお互いの意見をすべて採用し合うような、内容に仕上がっているかと思います。
ESC:まさに相性バッチリのお二人ですね! ただ、TOEICに対するスタンスや問題に対してのアプローチはお二人で結構タイプが違いますよね。
大里:はい、そうなんですよね。
濵﨑先生は、初めて出会った頃からずっと、「満点を取ってTOEICを教えたい」というところが一貫されてました。僕はどちらかと言うと「英語を実際に仕事で使いたい」という気持ちがあって。
出会ったころから、「スタンスは違うけれども、共通点はTOEICだよね」というところで話をしていました。
タイプが違うからこそ、それぞれ別々の役回りができて、うまくいっているのかなと思います。
ESC:今回「設問タイプ別攻略法」といって、問題をタイプ分けして解法を示しているところが特徴的だと思うのですが、こうしたアイデアもお二人で出されていたのでしょうか。
大里:「壁越えトレーニング」という企画自体は旺文社さんからお話をいただいて、その「壁越え」というコンセプトは二人で合わせよう、という話を最初にしました。
ただ、お互いの担当のPartの攻略法については、「お互いが学習者の時に壁にぶつかった経験をもとに考えよう」ということを決めたんです。
それで、Part 3・4については「設問の先読み」、「設問のタイプ」、「会話のトピック」に対して慣れがあると非常に解きやすくなる、ということを何らかの形で示したいなと思いました。
タイプ分けは細かく分けようと思えばキリがないのですが、自分自身の経験や公式問題集などを分析した結果、「ここを押さえておけば間違いない」というところをフレームとして作っていきました。
Part 3・4・7だと、「だいたいこういう流れで会話が進んでいく」という会話や文書の「パターン」というのが決まっているんです。
レストランでの会話、人の紹介、退職者のスピーチなど、TOEICに出題されているトピックには限りがあって、トピックごとに話の流れも予測ができるものなんですね。こうしたものを「トークタイプ別攻略法」の方に含めました。
ESC:「トークタイプ別攻略法」では、話の流れや聞くポイントが視覚的にわかりやすく示されていますね。こういう風に着目して解けばいいんだな、というのがわかります。
大里:一方で、設問にもタイプがあります。例えば、トークの概要となっている部分が聞かれる質問や、逆に枝葉の細かい部分を問う質問など。難しい問題になると1回しか言わない、とか。そういった細かいところは設問タイプのほうに含めています。
2.「先読み」することで、会話やトークのポイントを絞れ、ストーリーを推測できる
ESC:大里先生とは今までに何度かお仕事をご一緒させていただいているのですが、いつもTOEICの問題を細かく見て、いろいろなアイデアをご提案くださる方だなと思っております。
特にTOEICの知識、ストックの量が本当にすごいなと感じておりまして。「壁越えトレーニング」にも、そうした知識やアイデアが詰め込まれていますよね。
大里:ありがとうございます。特に「壁越えトレーニング」では、まだ990点を取得していない“学習者目線”での解き方を思い出して書き上げました。
僕自身も、ちょうどリスニングが400点~450点くらいのところで伸び悩んでいたときには、Part 3・4で、まだ聞き取れない表現があり、ある特定の苦手なテーマや質問のタイプがくると、そこで解くスピードが遅くなってしまうことがありました。その結果、次の先読みをしたり、トークを聞いたりするペースが乱されてしまって、結果的に崩れてしまうことがありました。
ESC:先読みのペースが乱れて後半が崩れてしまうことは、よくありますよね。
大里:昔、ヒロ前田先生と神崎正哉先生が、「先読みはアリかナシか」というところをラジオで議論していたのを聞いたのですが、その時に先読みをすることのメリットとして2つが紹介されていました。1つは「会話やトークの焦点が絞れる」ということ。そしてもう1つは「会話やトークの内容を推測できる」ということ。
例えば先読みで、What is the problem? という質問があれば、トークの中で「何か問題が起きるな」「好ましくないことが起こるな」ということがわかりますよね。登場人物が何かやらかしたんだろうなって。
ESC:なるほど。トークに対してきちんと準備ができるということなんですね。
大里:そうです。ここがわかっていると聞き方が変わりますよね。そういったポイントを「壁越えトレーニング」では、設問タイプ別攻略法としてうまく形にできたのかなと思います。
ESC:先生は普段からもこうしたタイプを意識して、問題を解いていらっしゃるのですか?
大里:今はどちらかというと先読みもしたりしなかったり、とあまりこだわりはありません。
海外に行くまでは主にTOEICを中心に学習していたため、まとまった会話・トークは設問がつきもの、という前提で英語を聞いていたんですよね。ですので、設問を先に読まないとペースが乱れていたのですが、海外留学や海外駐在経験を機に意識が変わりました。
海外で大量の会議での会話、自分のプレゼントーク、質疑・議論等を経験していると、そもそも設問がありませんからね。そのため、海外駐在当初は一定の会話やトークの後で「(先読み用の)設問をくれ!」とか思ったりもしました(笑)
ESC:(笑)現実の会話には設問はないですもんね。
大里:ただ、先読みをしなくなった今でも、まとまった会話やトークの中には、5W1H+3H(How many, How much, How often)はありますから、その点が中心にきたり、不足する会話やトークは質問のポイントかな、とか思ったりしています。
TOEICをやっていてよかったと思うのは、「先読み」を繰り返したことで、会話やトークのポイントを絞れるようになったことと、ストーリーが先に推測できるようになったことですね。
そのベースがあるので、実際の会話やトークはとてもスムーズに聞くことができます。
もちろん、聞き取りづらいイントネーション・アクセント、難解な表現はわからないこともありますが、ベースがしっかりしていると聞くリズムもあまり崩れません。
そういう意味でも、この「壁越えシリーズ」をやり切ることで、将来英語を使えるようになるための基礎ができるといっても過言ではないと思います。
3.TOEICを勉強して一番の壁は「学習を継続する壁」だった
ESC:現役のビジネスパーソンとしてお仕事をされている中で、TOEICでも結果を出し、勉強を続けていらっしゃる大里先生は多くのTOEIC学習者の方にとって、とても刺激になる存在かと思います。
大里先生ご自身は、どのような学習をされてきたのでしょうか?
大里:僕が英語学習を始めたのは30歳の時です。
それまでは受験英語で勉強して以来、まったく英語を勉強してはいなかったんですよね。
大学でも理系で、ヘビ毒の研究を行っていました。
そのあと、たまたま縁があって新卒でサラリーマンとなるわけですが、そのときに、社内研修の一環でTOEIC IPテストを受験して390点でした。そこで、「ああ自分には英語には縁がないな」と思って、ドメスティックに生きようと決めたのです。
でも、30歳になった時に「このままでいいんだろうか。将来を考えたら、本業の幅を広げるためにはグローバルな視点を身につけないと」と思い、英語学習をしようと思い立ちました。
おりしも社内でイギリスへの海外留学制度があり、その条件の1つのTOEICスコアがあったため、それがTOEICを学習するきっかけとなりました。
ESC:そこから英語やTOEICの勉強を始められたのですね。
大里:はい。そうは言っても、勉強する習慣がついていないから最初は本当に大変で。
一度TOEICの通信講座を買って、結局やらずに放置してしまったりしていました。
それでどうしようかなと思ったのですが、最初は単語から覚えようと思って、単語を1日2個ずつ、5分間勉強するところから始めました。
この、「学習を継続する壁」というところが、僕のTOEIC学習の一番の壁でしたね。
ESC:学習を習慣づけることは、多くの学習者の方も課題に思っているところかと思います。そこで挫折してしまう人も多いのではないかと思うのですが、どのように学習を継続させていったのですか?
大里:自分の中でのきっかけになったのが、扶桑社さんから出版されていた、『海外経験ゼロそれでもTOEIC900点』です。
そこに、「勉強した時間を時給に換算したら、自分が勉強した効果が金額的な指標でわかる」ということが書かれていまして。
つまり、時給600円だとしたら、10分やれば100円もらえる。
1時間で600円、1カ月間続けたら1万2千円、それを1年で14万4000円……、と。
そう考えたら、結構自分の勉強している時間って投資になるんだなと思って、貯金しているつもりで勉強しようと考えたんですよね。
ESC:なるほど。金額で示されると、少しずつでもやる価値はあるんだとはっきりわかりますね。
大里:そう思って、まずは1日単語を2、3個覚えるところから始めました。
ただ、僕は仕事柄飲みに行く機会が多く、帰宅後はどうしても眠くなっちゃう。
だから、帰ったらすぐ寝て、朝起きてからやろうと決めました。
それまでは6時半に起きていたのを、6時に起きて、「1日2、3個単語を覚えよう」というところから始めました。
そこから5分、10分ずつ家じゅうの時計を全部5分ずつ速めていって、少しずつ勉強時間を延ばしていったんです。
ESC:最終的に何時に起きるようになったのですか?
大里:午前3時ですね。それよりも早く起きたら、本業の会議で気絶しちゃって(笑)。
それで、午前3時より前は朝じゃないなと。
ESC:学習を習慣づけるために、自分ですごく試されていたんですね。それにしても午前3時起きはすごいですね……! 普通、まだ深夜という時間ですよね。
大里:僕のイベントでは、5時半以降を「朝」、4時半から5時半が「早朝」、3時から4時半は「超早朝」って言ってますね(笑)
それで、学習者の時は1日AM3:00~6:00、移動中等の細切れ計2時間で平日5時間、休日はAM3:00~8:00の5時間勉強をしていました。
毎日5時間、1カ月150時間、年間1,800時間を費やしていたことになります。先ほど言った通り、時給換算すればすごい金額になりますよね。
やっぱり、時間は自分への投資ですので、いかに捻出できるかだと思います。
ESC: TOEICの勉強を始めたときから、点数はどのように推移していったのですか。
大里:2006年の3月から勉強し始めて、7月には680点を取れました。そして、1年後の2007年3月には790点が取れましたね。
ESC:順調にスコアアップされていったんですね。最初のころはどのような勉強をされていたのですか?
大里:先ほど話した通り、最初は単語を覚えるところからですね。
単語を覚えると次は文法を覚えようとか、Part 2の音を聞き取れるようになりたいとか、Part 7のお知らせレベルのものは読めるようになりたいとか、欲が出てきて、どんどん広がっていったんですよね。
教材としては、旺文社さんから出版されていた、キムデギュンさんの『新TOEICテスト一発で正解がわかる』を使っていました。
Partごとの解法や、出る文法がまとまっていたのでそれを使って学習し、巻末の模試を繰り返し繰り返しやっていて。そうしたら形式がわかってきて、そこで680点取れましたね。
そこからは、模試を1セットか2セット買って繰り返し解いていました。数だけやってもしょうがないな、という気持ちがあったので、あまり参考書を増やさずにやっていましたね。
※『新TOEICテスト一発で正解が分かる』は旧型式の内容になります
ESC:大里先生のご著書は、1つの問題を様々な角度から見て、吸収するというスタイルを特徴とするものが多いかと思いますが、その当時からだったのですね。
大里:そうですね、当時から「1冊の本を極める」というスタイルで学習をしていました。
ESC:2007年に790点を取得されてから、2011年に990点満点を取得されるまでには、どのような「壁」があったのでしょうか。
大里:いくつかありますが、まずは900点の壁ですね。800点前半でスコアが伸び悩んでしまいました。
ちょうどそのころ、勉強会の際に神崎正哉先生に相談したら「音読をちゃんとやってみたら?」というアドバイスをもらったんです。
そこから「声に出して音読しながら、英文を書く」という音読筆写を繰り返しやっていました。
この時に利用した、神崎正哉先生の「ウルトラ語彙力主義(現在絶版→「神崎正哉のTOEIC TEST ぜったい英単語」として発売)」はバイブルです。
そこに載っていた例文を繰り返し繰り返し、音を聞いて発音しながら書いていました。
そのときにはじめて、日本人が思っている音と、ネイティブが発音する音にはズレがあるんだな、ということを学んだのです。
そうしたら、今まで耳垢がたまっていた感じだったのが、クリアに「音が聞こえた」という感覚がわかって、そこでリスニングが満点近くまで伸びました。
ちょうどそのころ、オフ会で濵﨑先生に出会いましてね。音読筆写のノートを見せながら、「僕、こんなに勉強しているんですけど、なんで900点取れないんだろう?」って話しかけたんですよ。そしたら濱崎先生から「これだけ勉強していたら、絶対取れますよ!」って言ってもらえて、そしたらそのあとの公開テストで本当に900点取れました。
ESC:リスニングが900点を取るためのカギだったのですね!
4.まずは出題されるポイントを押さえ、繰り返し解いてスピードを上げる
大里:そのあとは950点の壁がありましたね。
この時期は、パート5,6を速く解くためにとにかく問題を超スピードで解いていました。
中村澄子先生の「千本ノックシリーズ」を、ゴムサックを指にはめて、おそろしく速くめくって解いていました。
答えを暗記するのではなくて、パッと見たときに、瞬時にちゃんと考えながら解くという感じですね。
ESC:指サック……! 本当にスピードを極めていたんですね。
大里:そうやって勉強していたある日、ゴムサックを勉強場所に持っていっていなくて、そのまま高速でページをめくって勉強をしていたら途中で指を切ってしまったんです。それでもそのまま解き続けて、血だらけになってしまった「千本ノック」の本が、まだ家にあります(笑)
ESC:ち、血だらけの千本ノック!! す、す、すごい……。執念を感じます……!
ESC:「壁越えトレーニング」に収録されている対談を拝見したのですが、大里先生はPart 5、6を5分から10分ほどで解いているとおっしゃっていましたよね。
大里:そうですね。今はPart 5を大体2~3分で解いています。
ESC:Part 5は30問あるので、1問当たり数秒ですよね。一体どうやったらそんなに速く解けるのですか?
大里:「選択肢を読む」 ➡ 「問題タイプを見極める」 ➡ 「解答を決め、検証として設問を読む」、という感じで解きます。そのサイクルを頭の中がいつもの思考の数倍くらい速い速度で回す、というところでしょうか。
ESC:設問を読む前に、もうどの選択肢が正答かまで検討をつけているということでしょうか。
大里:はい。自分の頭の中でデータベースがあって、「おそらく今回はこの語法の問題だろう」、とか、「この慣用句・コロケーションだろう」、というのがなんとなく問題から「匂って」くるのでそれを当てはめて、「ああ、自然だな」と思えば数秒で、「ん、待てよ」と思うと少し時間をかけて、という感じで解きます。
ESC:どの選択肢が正解か、問題から匂ってくるということですか。すごいですね! これまでたくさん解かれてきた経験値から、「これかな?」というあたりがつくということですよね。
大里:僕も最初は、「この設問は○○問題だから、こういう風に解こう」と考えていたんですけど、英語ネイティブの人にPart 5の問題を見せると、「正解はこれしかないじゃん」って言うんですよね。「理由はない」と。
日本語ネイティブの僕たちだって、「腹が立つ」ってなんで「腹」なのか? って聞かれても答えられないじゃないですか。
でも、「腹が立つ」、「足が立つ」、「顔が立つ」、「耳が立つ」、どれが正解? って言われたら「腹が立つ」が一番自然だって選べますよね。
結局Part 5も、突き詰めればそういうことになってくるんだと思うんですよね。
ESC:なるほど。
大里:ただ、ここまでやるには、本当に膨大な量の英文をインプットする必要があります。
ですので、学習者の人は、まずは壁を越えるためにポイントを押さえ、押さえたポイントを早く引き出せるように繰り返し解く訓練をすることが必要かと思います。そう考えると濵﨑先生の書き上げたPart 5・6の「壁越えトレーニング」で、「タイプ別攻略法」に沿ってしっかりとやるのがベターだと思います。
「タイプ別攻略法」に沿って勉強することで、問題のタイプや攻略法を学ぶことができるので、自分のデータベースを構築していく上での補助輪となるかと思います。
ESC:「壁越えトレーニング」で法則を学んだあとは、たくさん問題を解いて、さらに自分のデータベースを構築していくとよいということですね。
大里:それができたら、あとは、いかに自分のデータベースからどれだけ速く引っ張ってこれるかなので。
「壁越えトレーニング」で型を身に着けて、そのあとに問題を解いて、自分なりにタイプに沿って問題を振り分けていく、それをできるだけ速くやるということをすると、より速く問題が解けるようになると思います。
まあ、僕ぐらい速く解こうとすると、超疲れますので、あまりオススメはしませんけどね(笑)。
5.Part7は本文の中に必ず答えがある
ESC:最後の壁は、990点満点の壁でしょうか。
大里:そうですね。テストを受けると2、3問、取りこぼしてしまう問題があるので、そこをより精緻に正解を解くために解くスピードの調整を問題のタイプに応じて行いました。
僕の場合は、Part 7が最後の壁でしたね。
1テストごとに2、3問、何度もどうしても取りこぼしてしまうので、Part 7をじっくり解くことにしました。
Part 5、6は5~6分で解いて、Part 7は50~60分以上かけて解いていました。
ESC:濵﨑先生はPart 5・6に20分くらいかけて、Part 7は30分くらいで読むとおっしゃっていたので、真逆ですね!
大里:そうなんですよね。
Part 7の問題は時間をかければかけるほど得点源になるんですよ。
なぜなら、絶対に本文に答えが書いてあるからです。
Part 5、6は、正答を選ぶための理屈は自分の頭の中にしかないんですよね。だから、時間をかければかけるほど解けなくなってしまう。
だから僕はNOT問題などについては、何度も取りこぼしてしまったので、選択肢もすべて読んで、根拠もきちんと確認するようにしました。
そうすることで、取りこぼしがなくなって、990点満点を取ることができました。
6.TOEICが実際の英会話で役立たなかったことは1ミリもない
ESC:大里先生はカナダでのご駐在の経験もおありだと伺いました。
TOEICを学習していたことが、実際の英会話やビジネスの場面で役立っていると感じたことはありますか?
大里:990%役立っています。役立っていないことは1mmもありません!
TOEICで学んだことがビジネスマンとしてどう生かせるか、ということについては、実はこんな本を出版していますが、すべてのパートが役立ちます。
『TOEICテストで目標点数を出したあと、ビジネスで活躍するための英語勉強法』
例えば、実際の生活の中でも、Part 1みたいな英文を使ってプレゼンで写真を説明したり、「誰がJohnさんなの?」って聞かれて、It’s the man wearing a hat.「あそこの帽子をかぶっている人だよ」って答えたりとかという場面は、よくありましたね。
Part 2やPart 3もスモールトークに役立ちますし、Part 4はプレゼンの冒頭にそのまま使えます。
文法を正しく使うという意味では、Part 5ももちろんすごく重要ですし、Part 6や7で出てくるメールのやり取りやチャットなどは、仕事や日常生活のコミュニケーションですぐ使えるものでしたね。
もちろん実際の会話ややりとりでは、もっと長い会話ややり取りが続くわけですけれども、そのイントロやベースになるものがTOEICで勉強できるような英文かなと思います。
ESC:TOEICを足掛かりにすれば、いろいろな場面で使える英語を学んでいけそうですね。
大里:あとは、ビジネスで役立てるためであれば、アウトプットの訓練、すなわち書く、話すトレーニングをしたほうがよいです。
TOEIC SW テストも非常によいテストです。LRを勉強してつけたチカラを話す、書くことに飛躍させやすく、とっかかりとしてはいいと思います。
あと、Part 3・4の会話やトークの暗唱はとても効果的です。僕も海外駐在時には日課としてやっていました。毎日Part 3・4を暗唱して、120パターンくらいを覚えていましたね。
ESC:120パターンとはすごい量ですね。
大里:今でも思い出せば、暗唱できますよ。
ESC:もう体に沁みついているのですね!
TOEICでベースを学習して、アウトプットの練習をしっかりすれば、ビジネスでも使える英語が身につくということですね。
今はどのように英語を勉強されているんですか?
大里:今は、あまり学習時間はないですね。
著作の打ち合わせや作問、原稿書き上げ時に英語に触れますので、英語の質を上げるトレーニングに自然となっているかと思います。
あとは以前の同僚とメールやチャットをしたりですかね。
加えて、自宅では政治・経済・金融のソースを取り入れるべく、基本ブルームバーグのニュースのみ聞いています。アメリカのニュースを聞くので、今は学習者の時よりも早く、1時半に起きてます。(笑)
ESC:1時半ですか?! 「超早朝」を超えてますよ(笑)。すごすぎます!
7.大里先生からのメッセージ
ESC:最後に『壁越えトレーニング』を使って、目標点を取るための「壁」を乗り越えようとしている読者にメッセージをお願いします。
大里:本書をご購入くださりありがとうございます。
この本は僕と濵﨑さんが過去の学習者時代の悔しい思いや、この方法でいけるぞ! という試行錯誤した経験をもとに、コンセプトを練り上げて作成に至ったまさしく「壁を越える」ための1冊です。
この本を使えば、苦手克服はもとより今まで得意だと思っていた分野をさらにブラッシュアップできると思います。
そして編集に携わった旺文社の優秀な編集担当者様、なによりも今回のコンセプトをしっかりと受け止めて問題を作成頂いた、数々のTOEIC書籍で実績のあるメディアビーコンさんと仕事をさせていただき、とてもいい作品になったと思います。
我々もTOEICで人生を変えることができました。みなさんが壁を越えて更なるステージに立てるお手伝いができればうれしく思います。
みなさんの英語学習に少しでもプラスになりますことを心より願っております!
ESC:ありがとうございました!
8.おわりに
大里先生のインタビュー、いかがでしたか?
大里先生のTOEICに対する学習姿勢を伺っていると、トップアスリートの話を聞いているような感じがしました。午前3時起きで勉強していたお話や、血だらけの千本ノックのお話を聞いたとき、「大里 半端ないって!」と思わず叫びそうでした。
この記事をご覧になった方の中には、「大里さんだからTOEICで結果を出せたのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、大里先生も最初は1日5分の英語学習からスタートされた、仕事が忙しい一人の学習者でした。1日5分から始めて、そのあとも学習時間を捻出し継続する仕組みをご自身で試行錯誤されています。その結果が現在の大里先生なのです。
どのような環境でも、コツコツと学習を継続していくことで、あなたの目の前に立ちはだかる壁を越えることはできます。それを大里先生が証明してくれているのです。
大里先生のお話を伺って、継続して学習を積み上げていくことの大切さを改めて感じました。
あなたがTOEICの学習をしていて壁にぶつかっているのであれば、大里先生・濵﨑先生のエッセンスがつまった『壁越えトレーニング』シリーズはきっと役に立つと思います。ぜひ手に取ってみて、あなた自身の壁をあなたの力で乗り越えてください!
濵﨑先生インタビュー 第1回「設問タイプ別の学習で壁は越えられる!」はこちら↓
濵﨑先生インタビュー 第2回「濵﨑先生に聞く、TOEIC満点の壁・突破の王道」はこちら↓
大里秀介先生プロフィール
TOEIC L&Rテスト990点、TOEIC S&Wテスト ライティング200点満点取得の経験を持つ現役サラリーマン。2006年から英語学習を開始して、2007年スコア730点を突破、社内選考でイギリス留学を経験する。2012年からカナダに駐在勤務し、北米間の大ビジネスプロジェクトをTOEICで磨いた英語力を駆使して成功に導く。著書に『3週間で攻略 TOEIC L&Rテスト900点!』(アルク)、『TOEICテスト新形式完全攻略模試』(学研プラス)などがある。