【第2回】5種類の辞書を引いたら単語は自然に覚えられる
『TOEIC L&R テスト 860点奪取の方法』(旺文社)の著者、藤枝暁生先生のインタビューを全3回にわたってお届けします!
現役サラリーマンでありながら、TOEIC満点著者でもある藤枝先生。今でもTOEICを受験し続け、通算受験回数は100回を超えます。
第2回となる今回は、藤枝先生の英単語の覚え方と今現在のTOEICの勉強法について伺いました。
第1回「765点に到達したとき、900点への地図がはっきり見えた」はこちらから↓
第3回「TOEICを通じて困っている人を助けたい」はこちら↓
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わからないことを調べることが好きだった
English Study Cafe編集部 (以下、ESC):藤枝先生は990点を取得するため、独学で勉強をされてきましたが、独学でも満点を獲得できた要因というのは、どのあたりにあるのでしょうか?
藤枝暁生さん(以下、藤枝):もともと人に教えてもらうことがあまり得意ではありませんでした。学校の授業中でも、他の教科の勉強をして、よく先生に怒られていました(笑)。
自分の性格上、わからないことを調べるのが好きなんですよ。
英単語を覚えるにしても、単語帳の単語をそのまま覚えようとしたことはあまりなくて、模試や問題集を解く中で出会った単語を、辞書で調べているうちに自然に覚えていきました。
ESC:自然にですか! それはすごいですね。
藤枝:電子辞書にはたくさんの種類の辞書が入っていますから。英和辞典を2種類くらい、英英辞典も2種類くらい、それから類義語辞典や活用辞典も引いて、というふうに何度も辞書を引いているとだいたい覚えることができますね。
ESC:単語帳に掲載されている単語を順番に1つ1つ覚えていったわけではなく、問題を解いたり、長文を読んだりする中でわからない単語を調べながら自然に覚えていったのですね。
藤枝:もちろん単語帳も使っていますけど、単語を覚えるために単語帳を使っているのではなく、ある程度まとめて勉強をした後に、覚えた単語が増えているかのチェックとして単語帳を使っています。
その中で、どうしても覚えられない単語があったときに、初めて単語帳を使って覚えるようにしています。
ESC:確かに英単語帳を使っていると、どうしても覚えられない単語が出てきますよね。そういった単語も同じように辞書で調べていくということですか?
藤枝:そうですね。辞書で調べて、例文を単語帳に書き込んだりします。そのときも、覚えようという意識はあまりありません。わからないことを調べるうちに何度も英単語に触れて自然に覚えていくイメージです。
ESC:ここまでお話を伺っていると、藤枝先生は辞書を非常に有効に活用されていると感じるのですが、どのような辞書を使ってらっしゃるのですか?
藤枝:僕が使っているのは、カシオのEX-word XD-A10000という電子辞書ですね。
TOEIC900点を取ったときにカシオの一番高い英語モデルの辞書を自分へのご褒美として購入しました。
ESC:それまでは紙の辞書を使っていたのですか?
藤枝:900点を取るまでは、辞書はまったく使っていませんでした。日本語訳と語注を読めば十分だと思ったので。ただ、900点を超えてからは、もっと深く単語の用法や使い方を知る必要があると思い辞書を購入しました。
ESC:具体的にどのように辞書で学習を進めているのですか?
藤枝:英和辞典や英英辞典、類語辞典を基本的には活用しているのですが、他の方があまり使っていない辞書としては、英和活用大辞典をよく使用していますね。
例えば、informという動詞を英和活用大辞典で引いてみます。
そうするとこんなふうに、セットで使うことができる表現が一覧で表示されます。
これを見ながら、「この副詞とセットで使えるのか」とか、「後ろにthat節をとるんだな」といった具合に、それぞれの単語の使い方を1つ1つ頭に叩き込んでいきます。
ESC:なるほど。ただ、これを全部覚えていくというのはかなり骨の折れる作業なのではないですか?
藤枝:電子辞書にはヒストリー機能がありますから、1週間に1度くらいの頻度で見直すようにしています。
自分が調べた単語を、時間を空けてもう一度見直すことで、記憶が定着しやすくなるからです。
ESC:電子辞書の機能を使いこなしているのですね。他にも単語を覚える際のポイントはありますか?
藤枝:僕は複数の単語帳を使っているので、いろいろな単語帳と情報を見比べながら英単語にたくさん触れて覚えるようにしています。
単語帳はおそらく今までで、16冊くらいは取り組んできました。
ESC:16冊もですか! すべてTOEIC対策用の単語集ですか?
藤枝:はい。単語帳を使っていると、単語が掲載されている順番で意味を覚えてしまうこともありますから、そういったことを防ぐために、複数の単語帳を使うのは効果的だと思います。
それと、「この単語はこっちの単語帳だったらすぐに覚えられた」みたいなこともありますから、少なくとも2冊、できれば5冊くらいは単語帳を持っていた方がいいと感じています。
電車の中でPart 7を1セット分読み切ります
ESC:藤枝先生の普段の勉強法に関して伺いたいのですが、普段はどのような勉強をされているのですか?
藤枝:普段の勉強は、ほとんどTOEICの素材しか取り組みませんね。
模試は常に持ち歩いていて、今も韓国の既出問題集の模試を2セット分持っています。1冊丸ごと持ち歩くのは重いので、1セット毎に切り裂いてしまっていますけど(笑)。
ESC:この模試は普段どのように利用されているのですか?
藤枝:すでに1度解いてしまっている模試なので、基本的には、移動中にPart 7の英文をひたすら読んでいます。問題は解いていません。
問題を解かなくても、本文が完璧に読めていれば問題は正解できるはずなので。
時間短縮の意味も含めて問題を解いてはいませんね。
だいたい20分でPart 7を1セット分読み終えることができます。自宅の最寄り駅から会社の最寄り駅に着くまでの間に、Part 7を読み切ります。
ESC:20分でPart 7の英文をすべて読み切るのですか! 読む際のスピードは意識的に速くしているのですか?
藤枝:読むスピードに関しては、ほとんど意識したことがありませんね。速く読むためのトレーニングは、今まで一切したことがありません。
なぜかと言うと、「たとえ今は時間内に解き終わらなかったとしても、実力がついてくれば、いずれ読み切れるようになる」と思っていたからですね。
TOEICのリーディングで時間が足りなくなる人は、文法力、語彙力、英文構造を読み解く力が足りていないから読み終えることができていないんですよ。
実力が足りていない人が、ただ単に急いで問題を解いても、読み間違いや読み飛ばしが発生して、本来正解できるはずの問題まで落としてしまいます。
ですので、僕はタイムアタックをしたことがありません。時間を意識して問題を解くのは、本番のときだけです。その際も、意識して速く問題を解こうとはしていませんが。
ESC:実力が足りていない状態で急いで英文を読んでも、余計なミスが発生する原因になりかねないですからね。
自分の実力に合わせて、きっちり意味が理解できるスピードで本文を読んでいくことが重要だと私も思います。
リスニングに関してはどのようなトレーニングを行っているのですか?
藤枝:リスニングに関しても、家から会社までの移動時間を使っています。
模試のPart 3、4の音声を1.5倍速で、問題は解かずに聞いています。Part 3、4も音声がきっちり聞こえていたら問題は解けますから。
自宅から会社に着くまでの時間で、Part 3、4を3セット分くらい聞くことができますから、それだけでかなりのトレーニングになります。
ESC:リーディングもリスニングも問題は解いていないのですね。
いつ頃から、そういったトレーニングをされているのですか?
藤枝:950点くらいを取れるようになってからです。
TOEICの英文をほとんど理解できるようなってきたときに、特にやるべきだと思ったことが「多読」です。多読といっても1つの文章を何度も読むという意味での多読です。
問題を解かないのは、1セットにかける時間を短縮してたくさんの文章を読むためですね。
何度も何度も1つの文章を読むことを繰り返すと、頭の中に英文のストックができて、初めて読んだ文章でも速く読めるようになるのです。
ESC:藤枝先生は、具体的に1つの模試を何回くらい読まれるのですか?
藤枝:10回くらいですかね。明確に基準を設けているわけではありませんが、Part 7を15分くらいで読めるようになったら、その模試は終わってもいいと考えています。
ただ、明確に時間を計ってるわけではなく毎日電車に乗りながら、「会社の最寄り駅に着くまでに読み切れたらOK」という感じで取り組んでいます。
ESC:電車が駅に到着するまでの時間を基準にして、Part 7を読んでいらっしゃるのですね。通勤電車であれば、毎日同じ路線の同じ駅を利用しますから、基準がわかりやすい(笑)。
藤枝:もし電車の中で読み切れなかったら、駅のホームに立って、読み終わってから改札を出ることもあります(笑)。
毎日そのくらいの量をこなさないと、TOEICという忙しいテストを解き終われるようにはなりませんよ。
ESC:TOEICのリーディングは75分で100問を解く必要があるわけですから、文章を一度読んだだけで、きっちり理解する力を養っていく必要がありますよね。一度解いた模試の文章を何度も読むのは、非常に役に立つトレーニングだと思います。
その他にも、藤枝先生はタイムマネジメントに関して何か意識していることはありますか?
藤枝:本番のTOEICテストのときは、毎回リーディングセクションを解き始める前に、1分くらい使って問題全体に目を通すようにしています。
見るポイントは、Part 7の文章の量、NOT問題やmost likely問題の量、難しそうなarticle(記事)問題があるかどうかなどです。
TOEICは受験する回によって毎回難易度が変わりますから、簡単そうな回であれば時間に余裕を持ってPart 5、6を解くことができますし、難しそうであれば、後々難しい問題が待ち構えていることがわかった状態で、Part 5、6を解くことができます。
先に問題全体を見ることをしないで、後から時間が足りないことに気づいていては手遅れになってしまいますから。
ESC:なるほど。確かにそれはいい方法ですね。
多くの人が、少しでも早く問題を解き終わるために、すぐに問題を解き始めていると思いますが、終盤になって慌てている人は多いと思います。
藤枝:この方法をやっている人は少ないですが、リーディングセクション全体を見ることに1分くらい使ったとしても、損をすることはありません。後から必ず取り返せます。
むしろ、いきなり問題を解き始めてしまうのは、コンパスも地図も持たずに森に入っていくようなもので、危険な方法だと思いますね。
ESC:おっしゃる通りですね。
藤枝:ただ、この方法をいきなり本番で試すのはやめてください。
公開テスト本番で、いきなり普段と違うことをやる人がいますが、急に普段と違うことをして上手くいった人を見たことがありません。
ESC:「普段できないことは、いきなり本番でできるようにはならない」という考え方はTOEICを受ける上ではとても重要ですね。
藤枝:普段から本番を想定した練習をして、本番も普段通りに問題を解くことが、結局は最も確実にスコアを獲得する方法だと思います。
(つづきます)
第3回は、藤枝先生がTOEICを受け続ける理由とこれからの目標についてです。
第1回「765点に到達したとき、900点への地図がはっきり見えた」はこちらから↓
藤枝暁生先生プロフィール
1963年東京都生まれ。1986年中央大学法学部法律学科卒。大学卒業と同時に損害保険会社に入社、現在は、SOMPOリスクマネジメントに勤務しており、企業向けのコンサルタントとして、主に自然災害のリスクアセスメントを担当。TOEIC L&Rテストは、2007年3月から100回以上の連続受験を継続中。独学で満点まで辿りつくという目標を掲げ、2014年4月に990点満点を取得。以後、数々の学習会を主催し、講師としてTOEICの学習指導を続けている。著書に『サラリーマン居酒屋放浪記』『サラリーマンのごちそう帖』(朝日新聞出版)。