今回は、2020年8月に出版された、『TOEIC L&Rテスト 壁越えトレーニング シリーズ』(旺文社)の3冊同時刊行を記念して、著者である濵﨑潤之輔先生のインタビューを、2回にわたってお届けします! 今回はコロナの影響もあり、オンラインでのインタビューをさせていただきました。
濵﨑潤之介先生と、大里秀介先生の「ゴールデンタッグ」で執筆されている本シリーズ。
Part 1-4(濵﨑先生・大里先生共著)、Part 5-6(濵﨑先生著)、Part 7(大里先生著) の3冊に分かれており、それぞれ 「診断テスト」で自分の“苦手=壁”を把握→「トレーニングカウンセリング」で学習計画を立てる→「タイプ別の攻略法」に沿って勉強する という流れになっています。
第1回目は、「壁越えトレーニング」の中身について、詳しくお話を伺いました!
本書への熱いこだわりや、大里先生との友情・絆などなど、必見です!
1.「設問タイプ」を知っていれば、その対処法がわかる
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『TOEIC L&Rテスト 壁越えトレーニング Part 1-4』(旺文社)
『TOEIC L&Rテスト 壁越えトレーニング Part 5-6』(旺文社)
『TOEIC L&Rテスト 壁越えトレーニング Part 7』(旺文社)
English Study Cafe編集部 (以下、ESC):「壁越えトレーニング」の出版、おめでとうございます! 企画が動き出したのは、1年以上前ですよね。
濵﨑 潤之輔さん(以下、濵﨑):そうですね。1年位前だと思います。だいぶ前ですね。
ESC:今回、弊社でも問題の制作から関わらせていただいたのですが、ちょうど昨年の今ぐらい、夏の時期に問題の制作をはじめた記憶があります。
今回は、大里先生との共著とはいえ、3冊同時刊行ということで大変だったのではないかなと思うのですが、まず「壁越えトレーニング」のメインになっている、「設問タイプ別攻略法」についてお話をお伺いできればと思います。
よろしくお願いします。
濵﨑:よろしくお願いします!
ESC:今回、『TOEIC L&Rテスト 壁越えトレーニング Part 1-4』で編集を担当させていただきました。濵﨑先生のご担当のPart 1と2は、リスニングパートの中でも特に瞬発力が必要ですよね。そのなかで、「写真や音声のどこに注目し解答を選ぶか」ということが設問タイプ別攻略法で書かれていて、とてもわかりやすいなと感じました。
濵﨑:ありがとうございます。
ESC:同じPartでも、問題タイプによってかなり解き方が異なることに驚いたのですが、このタイプ別攻略法をどのように考案されたのですか?
濵﨑:まず、そもそもの話をすると、本来設問タイプってなくても問題は解けるはずのものなんですよね。
例えばリスニングセクションだったら、聞こえてきた音がすべて理解できている人にとっては、わざわざタイプに分けて攻略する必要はないですよ。
野球に例えると、カーブとかシュートとかフォークとか、いろいろな球種がありますが、たとえどんな球が来ても、バットを振って当たってヒットになればそれでいいわけじゃないですか。
それができる人は、タイプ分けはいらない。「別に、きた球を打つだけでしょ」ってレベルの人は。
ESC:なるほど…。
濵﨑:けれども、そうでない人は、やっぱり攻略をしていく必要があります。
「ピッチャーの投げる球種にはこれだけ種類があります」とか、「こういう球種ってここまで来たら落ちるんですよ」とか。
それぞれの球種のタイプや特徴を知っていれば、ボールが来たときに前もってそこにバットを振る軌道を合わせることができますよね。
ESC:確かに、対処法を知っているのと知らないのでは大きな差がありそうですね。
濵﨑:そうそう。例えばPart 1だったら、写真を見たときに「これは、人物が2人写っているから、おそらく正解は、どちらか1人の人物の動作か、2人共通の動作か、どちらかに言及している英文がくるだろうな」と瞬時に考えることができます。
そうすれば「こういう英文がきそうだから、ここに注意して待っていればいいんだな」と、自分の頭の中にストックしている英文を思い浮かべながら準備ができるじゃないですか。
それを示しているのが、今回の「設問タイプ別攻略法」です。
ESC:いろんな種類の球が来ても、打てるようにしておく準備、というわけですね!
濵﨑:そうです。で、「設問タイプ」というのは、細かく分けようと思えば、どこまででも細かくなってしまうんですよ。
例えば、「人物が1人の写真」が出題された際には、その人物の動作が正答になるパターンが多いですよね。
その人物がハシゴにのってペンキを塗るためのローラーを持っていたら、
The man is painting the wall.
「壁にペンキを塗っています」
という英文が正答になりそうじゃないですか。
けれども、当然それ以外のパターンもあります。
「帽子を被っています」
「長袖を着ています」
「家の窓が開いています」とか、
人物の周辺や背景を表す英文が正答としてくるパターンなどです。
ESC:実際のテストではいろいろな英文が出てきますよね。
濵﨑:そうなんです。ですが、それを全部ルール化してタイプ分けをしていたら、タイプの数がものすごい量になってしまいますよね。
だから、中級者以上の人をターゲットにしている「壁越えトレーニング」では、中上級者の人たちが気にするべきだと考えるタイプ分けだけをしています。
ESC:タイプが多すぎると、タイプを覚えることができず逆に混乱しますよね。それでタイプを絞り込んでいるんですね。
濵﨑:そうです。例えば、テレビのリモコンを見ると、20個くらい、たくさんのボタンがついていますよね。
ESC:ついてますね、正直何に使うのとかわからないものとかもあります…(笑)
濵﨑:そうですよね。20個ボタンがあったとしても、その大半は、何に使うのかもわからない、一生使わないボタンで、結局いつも使うのは5個くらいだったりする。
その「いつも使うボタン」に絞ったのが、今回の壁越えトレーニングの設問タイプ別攻略法です。
ESC:すべてのタイプを網羅しようとして、混乱してしまうよりは、よく出題されるパターンをしっかり攻略した方が効果的ということですね。
濵﨑:はい。本番のテストには様々な問題が出ますが、実際のところは、「壁越えトレーニング」に載っている設問タイプで、TOEICで出題されるほとんどのタイプはカバーできているかなと思います。
特に、800点以上を目指す方はもうリスニングは満点か、それに近い点数を取っている方も多いと思いますので、リスニングに関しては「これで満点が取れる」、というくらいのつもりでタイプ別攻略法を作っています。
2.“自分専用”の単語帳で言葉のストックを増やす
ESC:先ほど、タイプ別の攻略法を知っていれば、自分の中にストックしている英文の中から、無意識に正解となりそうな英語を思い浮かべて準備できる、というお話がありました。
「壁越えトレーニング」Part 1と2の解説にも、不正解の選択肢について、「この選択肢はこうだったら正解だった」「この選択肢はこういう問いかけに対しての応答だ」など、「正解となりうる表現のストック」を増やせるようなポイントが盛り込まれているところが印象的でした。
濵﨑:そうですね。そこは意識をしました。
結局、リスニングって、どうやって聞いて理解できるかというと「知っているから」じゃないですか。そして、「知っているかどうか」というのは結局「自分の頭の中にストックがあるかどうか」ということになる。
たとえ、すごく英語ができる人だったとしても、もしPart 1でなにか1つ、知らない単語があったとしたら、もうその問題は正しく解けなくなってしまう場合もありますよね。
だからこそ、知らない単語や表現に出会ったときに、それを一つひとつストックしていく、というのが大切なのかな、と思います。
ESC:そもそもこうした「単語や表現のストック」はどのように積み上げればよいのでしょうか。
濵﨑:僕自身、まだストック量が少なかった時は、エクセルにわからない単語を打ち込んで、自分の単語帳を作っていました。
ですが、それよりも上のレベルになってくると、それをやる必要がなくなってくるくらい、自分の中の単語や表現のストックが増えてきますので、それからは初見の模試や本番の問題を解いたときに出てきた知らない単語を、手帳やメモに書くようにしています。
メモに、意味・品詞・発音・フレーズ、できればセンテンスをまとめておいて、それをいつも見るようにしておくんです。
ESC:意味だけではなくて、品詞、発音やフレーズも一緒に書くんですね!
濵﨑:初心者の頃は、僕も英・日だけでしたけれどもね。中上級者であれば、品詞・発音・フレーズくらいは一緒に覚えておくといいと思います。
「単語は意味を覚えればいい」と思っている人も多いかと思うんですが、品詞も重要です。 品詞も頭に入れておくことで、Part 5の品詞問題を解く際に「あれこれ形容詞だったっけ、副詞だったけ」などと迷うことがなくなります。
あとは、もちろんリスニングでその単語を聞いたときに、自分の知っている単語と一致しなければ、理解することができませんよね。
リーディングでも、発音は重要です。僕は頭の中で音読をしながら読んでいるので、読み方を知らない単語が出てくると、そこで一瞬、「あれ、これどういうふうに読むんだっけ?」と思ってしまいます。そうすると、そこで英文を読むときにブレーキがかかってしまいますよね。
だから、発音を知らないだけでマイナスになるわけですよ。
ESC:なるほど。発音を知らないことが、リーディングパートでも足を引っ張るんですね。
濵﨑:そうです。だって日本語の文章を読むときでも、読めない漢字があるとそこで一瞬止まるじゃないですか。例えば今だったら、「コロナ禍」って言葉がありますけど、それを最初に見たときは「なんて読むんだろう?」って思いませんでしたか? (笑)
ESC:確かに、思いました! 「ころなうず」かな? とか(笑)
濵﨑:そうそう(笑) そこで立ち止まって考えてしまいますよね。
読み方を覚えておけば、そこで立ち止まらずに済む、ブレーキをかけずに先に進むことができるんです。
フレーズも同じ。 accordanceはin accordance with ~という形で使われる、といったように、フレーズの形で覚えておくと、Part 5の品詞問題で出たときにすぐに対応できますよね。
ESC:それらをすべて1冊のノートにまとめておくわけですね。
濵﨑:そうです、僕が今使っているのはHandyPickというノートで、100円~200円くらいのものなんですが。こういうような薄い、かさばらないノートやメモ帳をいつもカバンにいれておいて、とにかく気づいたときにメモしておいて、時間が空いた時にいつも見るようにしています。
ストックを増やすためだけの特別な勉強はしないんですよ。問題を解いて出会った知らない単語をストックしておいて、時間があるときにいつも見ておくというだけでも、中上級者の人であれば、十分ストックができていくのではないかと思います。
ESC:単語帳をイチから見ていくという感じの勉強法ではないんですね。
濵﨑:そうですね、初心者の人であれば、単語帳を使ったほうが効率的だと思います。まだ自分の中のボキャブラリーのストックが全然ないと思うので、それこそ出会った全部の単語を書かなければいけなくなってしまうので(笑)
中上級者の人で、ある程度自分の中のストックがある人であれば、こういうふうに自分の単語帳を作るのはおすすめです。
3.大里先生は990点を目指す上での仲間であり、ライバルだった
ESC:続いて、大里先生とのお話をお聞きしたいです。
「壁越えトレーニング」の本書に掲載されているお二人の対談で、2009年ごろから大里先生と新宿で週1回あって英語学習についてお話されていたとありましたが、具体的にどのようなお話をされていたんですか?
濵﨑:はい、まずそのくらいの時点で、僕ら2人とも985点くらいはすでにとっていたんですよね。スコアレベルも一緒だったんですよ。
ESC:もうすでに高得点だったのですね!
濵﨑:はい、それで当時は、TOEIC公開テストの後に、TOEIC本の著者の先生達が集まって、答え合わせをしたり、解説をしたりしていたんですよ。
ヒロ前田先生、森田鉄也先生、神崎正哉先生、TEX加藤先生といった先生が集まっていたんですが、僕と大里さん以外はすでに満点を取っている、みたいな集団でした。
僕たちはいつも985点か、低くても970点とかを毎回とっていたんですよね。
990点と985点の差は、5点しかないんだけれども、いつもほんとに満点が取れなくて……。
そこで、990点の人たちと、僕たちと何が違うんだろうって、大里さんと飲みながら話していたんです。そこからだんだん、じゃあどうすれば990点取れるだろう、という話になって。お互いやっていた勉強法を教えあうようになったんですよね。
ESC:なるほど。具体的にはどんな勉強法ですか?
濵﨑:例えば大里さんは、自分の英語のストックを増やしていくために、その当時流行っていたオバマ大統領のスピーチを音読したりしていたそうなので、それについての話だとか。
また、僕もそのころは塾の経営をしていて、お互い社会人なので、そのなかで毎日どうやって勉強していくか、なども話し合ったりしていましたね。
あと、もうお互い985点で満点までリーチなので、先に満点を取りたいじゃないですか、自分だけ取り残されるのは嫌なので(笑)。なので、そういう意味でも一番刺激しあえる関係でしたね。
ESC:なるほど。同じ立場、志を共有できる仲間であり、ライバルでもあったわけですね。
濵﨑:そうですね。その当時、Facebook、インスタ、TwitterなどのSNSなどはありませんでしたし、TOEICつながりの友達もいなかったので、リアルで「今こうしたほうがいい」という情報を交換し合える大里さんは貴重な存在でした。
ESC:なるほど。リーディングパートはどのパートから解くか、みたいな解き方の話もされていたのですか?
濵﨑:解き方の話はそんなにしなかったですね。
それよりも、毎回受けていて、間違えた問題についてどうしてその問題を間違えたんだろうとか、じゃあ次間違えないようにするためにはどうしたらいいんだろう、といったことを話していました。
ESC:その時点では、TOEIC公開テストを受けた後に、自分がどの問題を間違えたか、というのはわかっていた状態だったんですか?
濵﨑:もう100パーセント、わかりますよ。やっぱり解いていたときに不安なものを間違えていることが多いですからね。そこに向き合って、間違えた原因と対策を考えていったことが、990点をとれたひとつの要因だと思います。
(つづきます)
第2回では、ズバリ「どうやったら990点満点とれるのか?」という率直な疑問に、濵﨑先生からお答えいただきました! こちらもぜひお見逃しなく!
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濵﨑潤之輔先生プロフィール
大学・企業研修講師、書籍編集者。これまでにTOEIC L&Rテスト990点(満点)を70回以上取得。現在は、全国の大学で講師を務めるかたわら、大手企業でもTOEIC L&Rテスト対策の研修を行う。著書に、『中学校3年間の英語が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版)、『TOEIC L&Rテスト990点攻略[改訂版]』『TOEIC L&Rテスト470点奪取の方法』『TOEIC L&Rテスト目標スコア奪取の模試』(旺文社)などがある。