「英語耳」という言葉を聞いたことがありますか?
英語耳というのは、英語を正確に聞き取る力を持った状態、またはその力のことを指します。
もう少し具体的に言うと、日本語と英語の発音やイントネーションの違いを理解して、似たつづりの単語でも正確に音を聞き取り意味を判別できたり、その単語の発音を正確にできる人や状態のことを指した言葉です。
松澤喜好氏の著書「英語耳」が話題になったのをきっかけにこの言葉は広がっていきました。
そんな英語耳について、「子供が将来苦労しないためには、大人になってから教材で勉強し直すより、幼いうちから英語耳を育てる方が良いのでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。
今回は、英語耳にまつわるいくつかの考え方と幼いうちから取り入れられる勉強方法をご紹介します。
Contents
1. カタカナ発音で覚えさせたくない!英語耳を育てるのに適した年齢は?
「英語耳」についてもう少し詳しく具体例をあげると、日本人が苦手だとされるRやLの違い(例えばRightとLight)やth、shの音、英語特有のアクセントやイントネーションをごく自然に認識できるかどうかです。
中学生などある程度成長してから初めて英語の音を認識するとき、英語をローマ字読みで考えてしまいがちですが、それは日本語の発音形式に置き換えられた音で、実際の英語の音とは違っています。
ずいぶん前になりますが、2010年に理化学研究所が「日本語耳」について発表を行い、注目を集めました。これは日本人の乳幼児とフランス人の乳幼児の子音の認識を比較したもので、その結果、日本人は生後14カ月までに「abna」のように子音の連続が含まれる単語と「abuna」にように子音の連続が含まれない単語の音を区別して聞きとれなくなっていることがわかりました(2010年10月12日独立行政法人理化学研究所プレスリリース参照)。
ほかにも、言語の臨界期という考え方によれば、言語を習得するのに適した年齢があり、それを過ぎるといくら努力しても限界があるとされ、一般的に9歳までと言われています。
ただ、母国語の習得と第二外国語の習得を同じ臨界期の考え方で捉えることができるのかという点については、議論が続いています。
差し迫った大きな流れとして、2020年から小学校3年生、4年生で外国語活動が必修化され、5年生、6年生では英語が教科になりますので、ご家庭で英語学習に取り組まないとしても、今までより早くすべての子供が英語にふれるようになります。その動きも踏まえて、幼い頃からできることに取り組みたいと考える保護者の方も増えています。
一方で、英語を始めた時期によって、英語習得に大きな差が出るという明確なデータはなく、本人が興味を持って、効果的な学習法で勉強すればいつからでも英語の習得、上達は可能だと指摘する専門家もいます。
確かに大人になってから英語学習を始めても、留学や英会話教室、リスニング力を鍛える教材を活用して高い英語力を習得している人はたくさんいます。
最近はインターネットを通じて大量の情報を自宅にいながら手に入れることができるため、独学で英会話を練習したり、動画配信サイト利用して英語で映画を見て英語耳を身につける方もたくさんいらっしゃいます。
ですから、「幼い頃から英語をやっていないから話せない」、「赤ちゃんの頃から英語を聴かせていないから、ネイティブスピーカーのような発音を身に付けることができない」というわけではありません。「英語耳」について考えるとき、このような現状も押さえておいていただきたいと思います。
ただ、そのうえで、音に敏感な幼い頃から少しでも英語にふれさせたいと思っている方に、取り入れていただきたいことをご紹介したいと思います。
2. 言葉の意味と音をインプットしながら、フォニックスで「耳慣れた音」に
0歳からでも始められる英語と聞かれたら、真っ先にフォニックスをおすすめします。
フォニックスとは、発音と綴りの関係・ルールを示し、正しい読み方・舌の使い方を身に付ける方法のことです。英語圏の子供たちが読み書きを教わるときに、最初に学ぶといってもいい基本的なルールです。
発音記号などではなく、カタカナ読みで学ぶ教材も多いので決して難しいものではありません。
イメージがわかないなという方は、インターネットで「フォニックス」の動画を検索してみてください。フォニックスの教材は、日本語だけにふれていると気づくことのない英語の音を意識するのに役立ちます。
例えば、英語には日本語と違って、たくさんの種類の母音があります。同じ「ア」の音でも口を大きく開けて出す音と、のどの奥から短く「アッ」と言う音、「ア」と「エ」の間のような音などさまざまな音があります。
そういった日本語にない音を意識しながら発音を身に付けていく学習方法は、音に敏感な幼いうちから始めるのにぴったりです。
ただ、フォニックスを始めるにあたっては少し注意が必要です。フォニックスは幼児英語や小学校英語の世界でもよく取り入れられるようになりましたが、どんな状態でもまずフォニックスを始めればいいということではありません。
英語圏の子供たちと日本の子供たちでは、そもそも普段話している言葉が違います。
日本の子供たちがいきなり英語の馴染みのない音を聞かされたり言わされたり、まして綴りについて教わったりすると、苦痛に感じてしまう可能性があります。
1979年に創立し、幼児英語、小学校英語に関する数々の提案をしているmpi松香フォニックスは、「言葉は意味→音声→文字の順番で学ぶのが大原則」とうたっています。
まずは、イラストや動画などで言葉の意味と音を十分インプットした上で、音の特徴、つづりとの関係を学んでいくように工夫された教材を使うようにしましょう。
多くのフォニックスの教材は、子供が興味を持ちやすいアニメーションやイラストがたくさん使われていて、0歳から使えるものもあります。
日本は英語圏と異なり、英語の言葉と意味を結び付けやすい環境とは言えません。まずは子供がイラストや動画を通して、言葉の意味、音をインプットすることを意識するようにしてください。
3. 子供向けの教材やアプリを活用して話したいことを表現する楽しさを体感しよう
子供は音に敏感という特徴だけでなく、好奇心も旺盛。自分の言いたいことや興味のあることを表現できる楽しさを体感するチャンスです。
フォニックスをやりながら、身近な食べ物や動物、身の回りのことを表現できるような教材を取り入れてみましょう。まずは映像や音楽とともに、ものの名前を知っていけるような簡単なものをおすすめします。
無理に認識できない単語をただ聞かせるよりも、ものの名前と音をたくさんインプットして、歌や簡単な会話を通して覚えた表現をアウトプットできるような流れが作れるといいと思います。
教材を選びきれないという場合は、まず無料のアプリを使うと物の名前や簡単な表現に親しむことができます。
インターネットで「kids english app」と検索すると、アニメーションを見ながら楽しく英語の表現やものの名前を学べる動画や日常会話の表現を確認しながらストーリーを楽しめるアプリなどがいくつか見つかります。ぜひ活用してみてください。
また、Amazonでカテゴリーを「本」に絞って「フォニックス」で検索してみましょう。CD付きの子供向け教材が多数出てくるので、ここから子供が取り組めそうなものを1冊選んでみるのもよいでしょう。
4.【まとめ】英語を定着させやすい年齢のうちにできること
「英語耳」をつくるのに、基本的に年齢は関係ありません。発音を矯正するのもリスニング力をつけるのもいつでも始められます。
ただ、音に敏感な幼いうちに、日本語だけを使っていると気づきにくい英語特有の音を「耳慣れた音」として定着させることは、将来英語の音に抵抗を持たせないようにするのに役立ちます。
まず、おすすめしたいのはフォニックス。英語の音の特徴を意識することができるだけでなく、音とつづりの関係も視覚的に認識することができます。
ただ、どんな状態でもフォニックスを始めればいいというわけではないので少し注意が必要です。いきなり馴染みのない音を聞かせるのではなく、イラストや動画を使って言葉の意味と音を十分インプットしてから始めましょう。
加えて、子供たちが身近に感じやすい動物の名前や食べ物の名前、簡単な会話表現をアニメーションや動画を使ってたくさんインプットする機会を設けてみましょう。
英語を幼い頃から勉強させるべきかどうかということに関しては、さまざまな議論がありますが、幼いうちに英語の音に慣れ、表現する楽しさを体感することは、英語の勉強を本格的に始めた時に英語に対する抵抗小さくする効果があります。
そのことが将来英語力を伸ばす底力になります。