突然ですが、TOEIC Bridge(TOEIC Bridge Listening & Reading Tests)という試験をご存じでしょうか。
いわゆる普通のTOEIC(TOEIC Listening & Reading Test)との違いがよくわからないという方は多いかもしれません。
実は「TOEIC」と名の付く試験は複数あります。まず、最も受験者が多く、広く知られているTOEIC Listening & Reading Test。
ほかに、TOEIC Speaking & Writing Tests、TOEIC Speaking Testがあります。
また、それぞれのテストの中にも、個人で受験する公開テストと、所属する学校や職場単位で集団で受験するIPテスト(団体特別受験制度)の区別があります。
そして、今回取り上げるTOEIC Bridge Listening & Reading Tests(以下TOEIC Bridge)に加えて、そのスピーキング&ライティングバージョンであるTOEIC Bridge Speaking & Writing Testsがあります。
TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会のHPでは、TOEIC Bridgeは「英語学習初級者から中級者を対象とした、日常生活における活きたコミュニケーションに必要な”英語で聞く・読む能力”を測定するテストです」とうたっています。実際、TOEIC Bridgeは内容や試験時間から見ても英語の初級レベルの人におすすめの試験です。
TOEIC Listening & Reading Test(以下TOEIC)と比較しながら特徴と勉強法をご紹介しますので、初心者の方はぜひ受験を検討してみてくださいね。
Contents
1. TOEIC Bridgeの特徴を知ろう
TOEIC Bridgeの特徴をTOEICと比較してみましょう。TOEICよりもボリュームをコンパクトに、内容も易しくしたのがTOEIC Bridgeと捉えるとイメージしやすいと思います。
1-1. 問題構成や配点など、知っておきたい基本情報
TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会のHPでは、TOEICの種類ごとにスコアや配点、各パートの内容などの基本情報やサンプル問題が確認できます。
ここでは、公開されている情報を整理し、TOEICとTOEIC Bridgeの特徴を項目ごとに比較しました。どんな違いがあるのかチェックしてみましょう。
|
TOEIC Bridge |
TOEIC |
試験時間 |
リスニング 約25分 リーディング約35分 |
リスニング 約45分 リーディング約75分 |
問題数 |
リスニング 50問 リーディング50問 |
リスニング 100問 リーディング100問 |
スコア |
30〜100点(1点刻み) |
10〜990点(5点刻み) |
解答形式 |
マークシート |
マークシート |
日程 |
年4回 |
年10回 |
開催都市 |
13都市 |
80都市 |
受験料 |
4,950円(税込) |
6,490円(税込) |
申込方法 |
インターネット |
インターネット・コンビニ端末 |
公式認定証の発送 |
試験日から35日以内 |
試験日から30日以内 ※インターネット申し込みをした人は17日後にスコアを確認できる |
TOEIC BridgeもTOEICも、スコアは正答数そのままの点数(素点)ではなく、いったん統計処理をかけた換算点です。
TOEIC BridgeはTOEICと比較すると時間が短く、問題数も少ないことがひと目でわかりますね。では、気になる問題の内容をパートごとに見ていきましょう。まずはリスニングパートから。
|
TOEIC Bridge |
TOEIC |
Part 1 |
画像選択問題 6問
句や文を聞いて、4つの絵の中からその句や文を最もよく表す絵を選ぶ。 |
写真描写問題 6問
4つの説明文を聞いて、その中から写真を最も的確に表す説明文を選ぶ。 |
Part 2 |
応答問題 20問
質問や発言を聞いて、4つの選択肢の中から、応答として最も適切なものを選ぶ。 |
応答問題 25問
1つの質問または文章と、それに対する3つの応答を聞いて、初めの発言に対して最もふさわしい応答を選ぶ。 |
Part 3 |
会話問題 10問
2人の短い会話を聞いて、会話に関する2つの設問に4択で解答する。 |
会話問題 39問
2人、あるいは3人の会話を聞いて、会話に関する3つの設問に4択で解答する。 |
Part 4 |
説明文問題14問
短いメッセージやお知らせを聞いて、その内容に関する2つの設問に4択で解答する。 |
説明文問題 30問
アナウンスやナレーションなどのトークを聞いて、その内容に関する3つの設問に4択で解答する。 |
それぞれのパートで、形式はTOEIC BridgeもTOEICも似ていますが、TOEIC Bridgeの方が問題数が少なく、比較的易しい設問が多いのが特徴です。
例えばPart2では、TOEICでは質問文だけでなく応答文も放送されるのに対し、TOEIC Bridgeでは応答文が問題冊子に印刷されています。
また、Part3,4では、一つの会話やトークについて、TOEICでは3つの設問に答えるのに対してTOEIC Bridgeでは2問になっています。
この傾向はリーディングパートでも同様です。リーディングパートを比較してみましょう。
(TOEIC BridgeのPart1~3は、TOEICのPart5~7に相当しています)
|
TOEIC Bridge |
TOEIC |
Part 1 |
短文穴埋め問題15問
1カ所空所が入った文を読んで、空所を補うのに最も適切な語句を4つの選択肢から選ぶ。 |
短文穴埋め問題30問
1カ所空所が入った文を読んで、空所を補うのに最も適切な語句を4つの選択肢から選ぶ。 |
Part 2 |
長文穴埋め問題15問
語や句、または文が3カ所抜けている文章を読んで、それを完成させるのに最も適切な選択肢を4択で選ぶ。 |
長文穴埋め問題16問
語や句、または文が4カ所抜けている文章を読んで、それを完成させるのに最も適切な選択肢を4択で選ぶ。 |
Part 3 |
読解問題 20問
1つの文章を読んで、それに関する2つか3つの設問に解答する。 |
読解問題54問(1つの文章29問/複数の文章25問)
設問を読んで、4つの選択肢の中から最も適切なものを選ぶ。 複数の文章の内容を組み合わせて解く問題も出題される。 設問の数は1題につき2つ~5つ。 |
リーディングについても、TOEIC Bridgeの方が問題数が少なく、また形式もシンプルであることがお分かりいただけると思います。
問題数が少ないだけでなく、試験中に読む必要がある文章量も、TOEIC Bridgeの方が圧倒的に短いです。
TOEICを受験したことのある人が、公式HPで公開しているサンプル問題をご覧になると、TOEIC Bridgeはかなり易しく感じるはずです。
1-2. TOEIC Bridgeを英語初級者におすすめする理由
就職活動や会社の昇進試験などでは、TOEICのスコアが評価基準になることが多いです。TOEICの知名度の方が圧倒的に大きいことと、同じ試験でたくさんの人の英語力を知りたいことが合わさって、初心者の英語力までTOEICで測ろうとしてしまう企業が多いのですね。
しかし、キャリアアップの手段としてTOEICのスコアが欲しいのではなく、自分の英語力を測定したり、英語学習の励みにしたりするのに使いたいという場合には、英語の初級者はTOEIC Bridgeを積極的に受験することをおすすめします。
TOEICの対策をしようと思って問題集を解いたら時間切れになってしまったという経験はありませんか。リスニングのスピードについていけなかったりわからない単語が多すぎて、適当にマークする問題が多かった経験はないでしょうか。
このような状態で受験しても、勘で答えた問題が多すぎて、偶然当たった問題の方が自力で正解した問題より多くなったりしてしまい、自分の正確な英語力は測ることができません。それに、良いスコアが出ないのでモチベーションが落ちてしまいます。
国際ビジネスコミュニケーション協会では、TOEIC Bridgeの特徴として次の3つを挙げています。
(1) 日常的で身近な題材
(2) 問題もテスト時間も半分
(3) リスニングスピードはゆっくり
このように、TOEIC Bridgeは初級レベルの受験者に向けて作られているため、TOEICほど上記のような状態に陥りにくいです。
初心者でもちゃんと解答できるように作られているので、自分の英語力をより正確に把握できますし、成長も実感できるので「次はもっと上を目指そう」と思えるようになるのです。
ちなみにTOEIC Bridgeのスコアにも公式認定証があり、再発行期限はTOEIC同様2年間ですが、スコアそのものに有効期限はありません。
TOEIC BridgeはTOEICと形式がよく似ていますので、TOEIC Bridgeの対策をすることは将来的なTOEIC対策をすることにもなります。
初心者の方は、TOEICを受験する前にまずTOEIC Bridgeを何度か受験することをおすすめします。学習を重ねて受験を続ければ結果もよくなってきますから、自信がついてきたらTOEICに挑戦してみましょう。
2. 何から始める?TOEIC Bridgeの勉強法
TOEIC Bridge対策の市販教材や問題集は、TOEIC対策のものよりもずっと少ないですが、公式のガイド・問題集、アプリを活用すれば十分対策できます。
2-1. 公式ガイドブックで時間配分や傾向をチェック
国際ビジネスコミュニケーション協会が制作している『TOEIC Bridge 公式ガイドブック』は、TOEIC Bridge Listening & Reading Testsだけでなく、TOEIC Bridge Speaking & Writingの内容もすべてカバーしています。
TOEIC Bridge Testsは、2019年6月に内容が新しくなっています。そのため、新形式に対応したこのガイドブックで傾向をおさえましょう。
問題形式の詳しい説明とサンプル問題、本番と同じ形式の実践テストと解説がついています。
テスト本番に使われているイラストや設問を用いながら詳しく解説されているので、この一冊があれば初めて受験する人でも傾向がつかめるようになっています。
値段は2,000円(税別)。CD付きで、音声はダウンロードもできます。書店以外に、AmazonやRakutenブックス、セブンネットショッピングで取り扱いがあります。
この公式ガイドブックには実践テストがついていますが、一回解いておしまい、ではもったいない。
同じ問題を何度か解けば、音声の速さにも、長文の長さにも少しずつ慣れてきます。
「繰り返し解くと解答を覚えてしまって意味がないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、2回目以降解く際に重要なのは、「正解したかどうか」ではなく、「どのように解くか」です。
「長文のこの部分にこう書いてあるから、この選択肢が正解」といったように、根拠を意識しながら解くようにしましょう。このように根拠を探しながら解く復習を繰りかえすと、初めて解く問題でも根拠を見つけて正解しやすくなりますよ。
ちなみに、TOEICの公式HPでサンプル問題のpdfがリスニング音声付きで公開されていて、本番のテストのイメージを掴むことはできます。
しかし、問題数は本番よりかなり少ないので、試験直前まで公式ガイドブックの問題を繰り返し解くことをおすすめします。
TOEICの公式HPでは、公式問題集の活用法も多数紹介されています。単語の覚え方、長文の読むスピードを上げる方法など、どんな人にも参考になる勉強法が詰まっています。ぜひ活用してみてください。
2-2. 公式アプリ「TOEIC presents English Upgrader」を活用しよう
国際ビジネスコミュニケーション協会が提供している英語学習アプリで、iTunes Storeのランキングで1位を獲得している人気アプリです。しかも無料で使えます。
このアプリはTOEIC BridgeやTOEICの対策に特化したものではなく、日常会話からビジネスまでさまざまな状況での対話文をベースに、単語やフレーズを学んでいくものです。とはいえ、これらのテストでよく登場するトピックをベースにして学習できるので、試験慣れにつながる効果もあります。
和訳や解説、理解度チェックもついているので、参考書で学ぶときと同じように独学に取り入れやすい内容です。エピソードは毎月追加されるので、継続して長く使えますよ。
単語帳機能が充実しているので、覚えられていない単語を繰り返しチェックするといった使い方もできます。
ゲーム感覚で単語や表現を身につけられるのがアプリのいいところ。なかなか学習時間が確保できない人も、移動時間を使って手軽に学ぶことができます。
3. 「声に出すこと」「書くこと」を忘れずに
TOEIC Bridgeはマークシートで「読み」と「聞き」の英語力を測る試験。勉強していると忘れがちなのは「声に出すこと」「書くこと」です。
試験結果はある程度の英語力を知る目安にはなりますが、実際に英語を話したり書いたりできるかまでは、測りきれません。
実際、「TOEICで高得点なのに英語を話せない・書けない」という人の存在が問題視されていたりします。「読み」と「聞き」しか勉強していなければそうなってしまってもおかしくありませんが、それではもったいないですよね。
せっかく英語を学習するなら、「書き」「話し」も練習して、死角のない英語力を目指してみましょう。
そのためには、TOEIC Bridgeの対策をする際にも「声に出すこと」そして「書くこと」を必ず勉強の中に取り入れるようにしましょう。
ガイドブックに使われている例文を、CDを聞いて、音読しながらノートに書くのがおすすめです。声に出すことや書くことを通じて、新しく学んだ表現が記憶に残りやすくもなりますから、良いことづくめです。
スピーキングとライティングの能力を直接測るTOEIC Bridge Speaking & Writing Testsを併せて受験してみるのも手ですよ。
まとめ
TOEIC Bridgeは英語初級者におすすめの試験。TOEICよりも問題数が少なく、内容は日常生活で使う内容が多くやさしいので、勉強しやすく表現も身につきやすいのが特徴です。
公式ガイドブックやアプリを活用してステップアップしたら、将来はTOEICにも挑戦してみましょう。