TOEICテストといえばリスニングとリーディングパートで構成されるTOEIC L&Rテストが一般的で、「TOEIC何点」と言う時は大抵このL&Rテストのスコアを指します。
しかしグローバル化でより実用的な英語力が求められる昨今、TOEIC L&Rテストでは英語のアウトプット力、特にスピーキングの力を正しく測れないのでは、という意見も増えています。
そして、実はTOEICにはスピーキングテストがあるのです。このテストで高いスコアを獲得できれば、英語を喋る能力を示す指標になり、就職・転職、キャリアアップの武器になるでしょう。
L&Rテストと比べてスピーキングテストの認知度・受験者数はまだまだ少ないです。今回は、TOEICのスピーキングテストがどんなものなのか、概要と対策・攻略法をご紹介します。
1. TOEICスピーキングテストとは
TOEICのスピーキングテストは英語を話す能力を測るテストで、パソコンとヘッドセットを使い、マイクに英語を喋ってスピーキング力を判定します。
現在受験できるTOEICスピーキングテストは2種類あります。それぞれの特徴・概要を見てみましょう。
1-1. TOEIC Speaking Test
スピーキングパートのみを単体で受験できるテスト。試験時間が短く、次に紹介するS&Wテストより費用もリーズナブル。また、ライティングがないぶん出題範囲も狭くなるため勉強がしやすいです。
・試験時間:約20分 (計11問、受付時間等を除く)
・スコア:200点満点
・受験料:6,930円(税込)
・実施日程:年48回 日曜日
・開催地:東京、神奈川、埼玉、愛知、大阪
1-2. TOEIC Speaking & Writing Tests (S&W)
スピーキングに加えて、ライティングパートも受験し、英語を書く力も測るテスト。英語のアウトプット力全般を判定できます。
スピーキングパートの内容はひとつめのテストと同じです。
・試験時間:Speaking 計11問・約20分 / Writing 計8問・約60分
・スコア:各パートともそれぞれ200点満点
・受験料:10,450円(税込)
・実施日程:年24回 日曜日の午前・午後に1回ずつ
・開催地:全国主要都市
1-3. どちらを受けるべきか
スピーキングテストを初めて受ける方や、英語力にまだ自信が無いという方は、スピーキングテスト単体の方が対策しやすいのでおすすめ。ただし開催地が限られるので、お住まいの地域によっては交通費の負担が大きくなります。
英語を仕事でよく使っている方、ライティングも含めて英語のアウトプット力全般を確認したい方、開催地までのアクセスが難しい方はS&Wテストが良いでしょう。
どちらもL&Rテストの年10回より実施回数が多いですが、試験に専用の機材を使う分、開催都市・会場数はL&Rテストより限られています。
2. テストの概要・特徴
ここではスピーキングテストとライティングテストのうち、スピーキングテストに絞って問題構成と対策を見ていきます。まず、スピーキングテスト全体の内容を簡単にご紹介します。
2-1. スピーキングテストの概要
まずはTOEICスピーキングテストの大まかな内容・特徴をご紹介します。
・全6セクションからなる計11問が出題される
・問題文やインストラクションはパソコンに表示され、全て英語
・解答時間があり、制限時間内にマイクに音声を吹き込む
・音声を聞く問題ではヘッドフォンから音が再生される
受験者全員が一斉に解答を始めるペーパーテストと違い、ヘッドセットを着用し、パソコンのモニターを見ながら各自で試験を進めるのが大きな特徴です。
また、問題文のリーディングや音声のリスニングによって状況を理解し、その中で制限時間内にスピーキングで解答するなど、他の技能とも組み合わせた総合的な英語力としてのスピーキング力が求められます。
次からは、各セクションごとの問題内容を見てみましょう。
2-2. 音読問題
最初のセクションは音読問題が2問出題されます。アナウンスや広告などの短い英文を、(1問あたり)準備時間45秒で黙読し、解答時間45秒で音読する問題です。
単純に読み上げるだけなので簡単に思えるかもしれませんが、この問題ではその分発音・イントネーション・アクセントはシビアに判定されます。普段から発音を意識しているか、黙読・聞き流しによる学習だけでなく口を使った音読練習もしているかが問われます。
2-3. 写真描写問題
次のセクションでは、表示される写真を見て内容を口頭で説明する問題が1問出題されます。準備時間45秒の後、解答時間45秒以内に説明をマイクに吹き込みます。
発音に加えて、正しい文法・構文や適切な語彙を使って文章を構成して喋る能力が求められます。ただ、写真を説明するという内容であることから、解答の構成はある程度テンプレート化できます。
公式問題集などを参考に解答テンプレートを作れるので、対策しやすいセクションと言えるでしょう。
2-4. 応答問題
3番目のセクションは、個人的・身近な話題についてインタビューや電話に答える応答問題3問が出題されます。まず質問の音声が流れ、それに対して解答時間15秒または30秒を使って答えるのですが、準備時間が無いためすぐに話し始める必要があり、実際の会話に近い状況が想定されています。
「質問の内容を一度で理解し、それに対し妥当な内容の返答を瞬時に喋る」という、とても実践的な英語力が問われる問題です。
細かい文法のミスよりも、空白時間や質問に合わない解答をする方が大きな減点対象になりますから、考え過ぎずにパッと答えるのがコツです。また、語彙は簡単でもいいので分かりやすい英文を喋ることや、最初に結論を述べる英語らしい構文に慣れるのもポイント。
2-5. 提示された情報に基づく問題
4つめのセクションは、スケジュールなどの資料や文書が表示された後、それに関する音声での質問3問に応答する問題です。資料を読む準備時間は45秒ありますが、音声質問の後はすぐに答えなければいけません(解答時間は15秒か30秒)。
解答に必要な内容は全て資料内にあるので、短時間で多くの情報を把握するリーディング力が試されます。もちろん、何を聞かれているのか瞬時に理解するリスニング力も必要です。また、必要な情報をはっきりと喋り、内容を理解していることをアピールするのもポイントです。
2-6. 解決策を提案する問題
5つめのセクションは、ビジネスシーンにおけるトラブルの報告や相談などのメッセージを聞き、準備時間45秒・解答時間60秒で解決策を口頭で伝える問題が1問出題されます。
相手のメッセージを1度で聞き取り理解するリスニング力、話者の意図を汲み取り解決策を英語で提示できるスピーキング力が求められます。馴染みのない分野のトラブル・相談が出題される場合もありますし、短い準備時間の間で「どんな解決策を提示するか」まで考えなければならないので、難易度の高い問題といえるでしょう。
まずはリスニング力を盤石にしておき、そして問題集を参考に「このような相談にはこう答える」という流れをいくつか把握しておくとよいでしょう。
2-7. 意見を述べる問題
最後のセクションは、与えられたひとつのテーマに関する自分の意見とその理由を、準備時間30秒・解答時間60秒で述べる問題1問です。問われるテーマの内容の幅が広く、それに対して論理的に意見を述べることが求められるため、難易度が高い問題です。
まずは英語のロジカルな話し方の構成を知るのがポイント。
最初に結論・主張を述べる
→その根拠・理由・例を挙げる
→最後にもう一度結論を主張
スピーキングでもライティングでも、英語で意見を伝える際は上記のような流れで情報を組み立てるのが論理的だとされています。
まずはこの順番で文章を作ることに慣れましょう。
3. テスト対策の基礎
TOEICスピーキングテストの内容を見ると幅広い英語スキルが必要なことが分かり、どう対策していいのか分かりませんよね。ここでは、スピーキングテスト全体における対策方法の基礎をご紹介します。
3-1. 公式テキストで問題の出題形式と傾向を知る
TOEICテスト全般に言えることですが、出題形式や内容の傾向がある程度決まっているので、それに慣れることが効果的な対策の第一歩。スピーキングテストはL&Rテストと比べて試験方法も独特です。それを学ぶのに最適なのがTOEIC公式教材になります。
スピーキングテストの公式教材は『TOEIC Speaking & Writing公式 テストの解説と練習問題』と『TOEICスピーキングテスト/ライティングテスト 公式ガイド 新装版』が発売されています。
スピーキングテストは解答に瞬発力が求められるので、事前に問題構成を知っておくこと、解答のテンプレートを持っておくことが重要。そのためにも、本番に最も近い問題を確認できる公式問題集を1冊は持っておくのがおすすめです。
3-2. 採点基準に基づき練習する
スピーキングテストと聞くとネイティブのように流暢かつ完璧に喋る必要があると誤解しがち。しかしTOEICはあくまで非ネイティブ向けの試験なので、「質問の内容をしっかり理解し、答えられていること」「聞き取りやすいはきはきした分かりやすい発音ができていること」がポイントです。
高スコアを目指すうえで、ネイティブレベルの完璧な発音・文法は必須ではありません。それよりも、質問内容が理解できていない、解答内容が不明瞭・聞き取れないという方が大きく減点されます。
まずは公式テキストの内容をはっきりした発音で音読し、解答テンプレートを瞬時に使えるようにすることを目指しましょう。
3-3. 試験対策+総合的な英語力が必要
スピーキングテストはトラブル解決、意見の主張など、さまざまなトピックに対して自分で返答の内容を作る必要があるので、単純な試験対策だけでは乗り切れない部分がどうしても出てきます。
日頃の情報収集を英語でしたり、読書・映画・動画などのコンテンツを英語で楽しむといったように、日常に英語を取り入れるのは楽しみながら英語力を伸ばすおすすめの方法です。その際に「感想を英語でつぶやいてみる」というトレーニングを加えれば、スピーキングテストの対策にもなるでしょう。
また、試験形式を見ても分かるように、ある程度リスニングとリーディングができないと、そもそも問題に答えることができません。この基礎となる英語力に自信がなければ、まずはL&Rテストである程度のスコアを取ってからスピーキングテストに挑戦するのもよいでしょう。目安としては、700点以上取れるようならあまり問題なく解答できるはずです。
3-4. 日頃から英語のアウトプットを増やす
単語や文法などの知識が豊富でも、いざスピーキング・ライティングのアウトプットをしようとすると全然出てこないという人はとても多いです。L&Rテストで900点以上の高スコアを獲得できる人であっても例外ではありません。
英語のアウトプットには多くの練習量が必要です。オンライン英会話で実際に話したり、SNSの投稿を英語にするなど、日常的に英語のアウトプットを増やすことを意識しましょう。
4. TOEICスピーキングテスト対策のおすすめ教材2選
TOEICスピーキングテストはL&Rテストと比べて対策教材がまだ少ないですが、公式の教材以外にも良い教材はあります。ここでは、TOEICスピーキングテストのおすすめ教材を2冊ご紹介します。
TOEIC(R) スピーキングテスト 究極のゼミ(アルク)
引用:https://ec.alc.co.jp/book/7019028/
TOEIC L&Rテストのパート別対策参考書として人気・評価の高い「究極のゼミ」シリーズのスピーキング対策本がこちら。2019年6月以降の最新出題形式に対応しており、これからスピーキングテストを受けたい方に最適です。
掲載例題数が非常に豊富で、模試も3回分を収録。解答サンプルが中級・上級者向けの2種類用意されているので、満点レベルを目指すような人でなくても自分の実力に合わせてスコアアップが図れる構成になっているのが嬉しいポイントです。
TOEIC (R) SPEAKING テスト問題集 新形式完全対応版
引用:https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784327430948
2019年6月以降の新形式に対応した問題集。各問題の解説や学習・対策方法はもちろん、模試が6セット分も収録された大ボリュームが魅力。公式問題集を解き終わって、さらに実戦練習を積み重ねたい人には特におすすめの問題集です。
5. まとめ
これから国際的な人材の需要がさらに高まることは間違いなく、結果的に、読み聞きだけではなくコミュニケーションを取るための「使える英語」のスキルもますます重要になります。
TOEICスピーキングテストの対策はその英語力を鍛えることにもなり、高いスコアを取ることで国際人としてのポテンシャルをアピールすることができるでしょう。
実用的な英語力を身に付けたい方、英語を使った仕事がしたい方、就活でアピールする資格が欲しい方はぜひチャレンジしてみてください。