「英会話力を上げれば、TOEICスコアは上がるのか?」
結論からお伝えすれば、答えはイエス。ただ、だからといってやみくもに英会話の勉強から始めればいいというわけではありません。ここではその理由と、どのような手順で学習を始めるのが効率的かというお話をしていきます。
また、「英語力の証明にテストを受けたい」と考えている方に向けて、資格試験についても少し触れています。
1.英会話力とTOEICスコアは必ずしもイコールではない
冒頭でお話した通り、英会話力を上げれば、TOEICスコアは上がります。しかし、実はこの両者は必ずしもイコールではありません。
ここでは、この辺りの疑問について詳しくお話をしていきます。
1-1. 英会話力があればTOEIC対策なしでもハイスコアは取れる
英語系Youtuberの吉田ちかさんをご存じですか? 「バイリンガール」として知られている彼女は、日本人でありながらも、幼少期から大人になるまでアメリカで生活をしていたこともあり、英語、日本語両方のネイティブスピーカーです。
以前、そんな彼女が「ネイティブは、TOEICで何点を取れるのか?!// My TOEIC results!〔# 127〕」というチャレンジ動画をアップしていました。事前に全く勉強をしないまま、TOEICテストに挑戦したのです。そして結果は、なんと満点の990点。
このことから分かるのは、本物の英会話力があれば、TOEIC対策なしでもハイスコアを取得することは可能だということ。つまり、英会話力を磨けば、TOEICスコアを上げることはできるのです。
しかし、もしあなたがTOEICスコアを短期間で上げたいと思っているのであれば、英会話の練習から始めることが必ずしも効率の良い方法だとは言い切れません。その理由については、【1-4. 短期間でTOEICスコアを上げたいなら対策をすべき】の中でお話します。
1-2. TOEICはコミュニケーション能力を測るテストである
「英会話力があれば、TOEICスコアが上がる」理由の一つは、そもそもTOEICはコミュニケーション能力を測るテストだからということにあります。TOEICはビジネスにおけるコミュニケーションの場面を想定した英語が多数出題されます。そのためもちろん、英語でのコミュニケーション能力の高さがスコアに大きく反映されます。
ですから実は、TOEICに出てくる英語の難易度は、ものすごく高いというわけではありません。
ただ、ある程度英語力のある人でもハイスコアを取るのに苦労するのは、問題演習の量が少ないからと言えるでしょう。TOEICテストは、短時間で、膨大な量の情報を処理できる能力が必要不可欠です。英会話を得意としない英語学習者の多くが、内容が難しくなればなるほど、問題を解くときに頭の中で「英語→日本語」へと訳しがちです。それではそれだけで時間がかかってしまいます。
一方で、ネイティブをはじめ、英会話を得意としている人は、そのプロセスがない、もしくは少ないのです。だから、時間内に解き切ることができる。結果、ハイスコアの獲得につながるのです。
1-3. TOEICスコアが上がっても英会話力が向上するとは限らない
まず大前提として、ここでお話をしているTOEICテストとは、リスニング&リーディングテストのことを指しています。TOEICにはスピーキング&ライティングテストも存在していますが、現在の日本において、就活や昇進などで、スコアをもっていると有利だと言われているのは、リスニング&リーディングテストのことです。
つまり「TOEIC対策をする」ことで身につくのは、リスニングとリーディングの2技能。TOEICリスニング&リーディングテストのスコアが上がっても、英会話力が向上するとは限らない理由は、単純に「会話の練習をしていないから」ということにあります。
ただリスニングとリーディングの勉強が、会話に役に立たないかというと、決してそんなことはありません。TOEIC対策をする過程で、単語や文法などの知識のインプットはしているので、その部分に関しては補うことができています。むしろ、知識のインプットをするために、TOEICの勉強をするのは英会話習得に効果的でしょう。
1-4. 短期間でTOEICスコアを上げたいなら対策をすべき
もし、あなたの目標が「TOEICスコアを上げること」なのであれば、必ずTOEIC対策をしてください。
英会話力の向上がTOEICのスコアアップにつながるのは事実ですが、TOEICスコアを伸ばす手段ために、英会話の練習だけに重きを置くのが効率の良い方法とは言えません。なぜなら、インプットとアウトプットの両方の練習が必要な分、英会話力を磨く方が断然時間がかかるからです。
その点、TOEICは資格試験なので、当然出題には傾向があります。もちろん基礎の英語力は必要ですが、TOEICテストを攻略するテクニックを身に付けることで、効率よくスコアアップが目指せます。
時間があるのであれば、英会話力を磨いてからTOEIC対策に取り掛かるのでもいいかもしれませんが、短期間でTOEICのスコアを手に入れたいなら、TOEIC専用の対策は欠かせません。
2.効果的な学習の手順とは
さて、結局一番効果的な学習の手順はどんなものなのか。ここでは、そのことについて詳しく触れていきます。
2-1. 英語力を上げたら何をしたいか?その先のゴールを考える
この記事を読んでくださっているあなたは、おそらくぼんやりとでも英語学習の目標をもっているのではないでしょうか。ここでは、「その目標が達成できた後の目的」について考えて頂きたいと思います。
例えば、あなたの目標が「TOEIC700点を突破すること」だとして、700点突破できたら、何がしたいですか? 同じ目標でも、「昇進のためにとにかくスコアが取れればいい」という方もいるでしょうし、「700点突破できれば海外赴任のチャンスがある。そうなれば、会話力も必要」、「いつか英語力を活かして仕事がしたいから、ひとまず700点突破を目標にする」という方もいるでしょう。
目標の先にある目的まで考えることができれば、学習方法をより明確にすることができます。学習方法がより明確になれば、それが英語上達、目標達成への近道となります。
例えば「昇進のためにとにかくスコアが取れればいい」という方はTOEIC対策の勉強だけに集中すればいいですし、「700点突破できれば海外赴任のチャンスがある。そうなれば、会話力も必要」という方はTOEIC対策に並行して会話の練習も必要ですよね。期限もあるでしょうから、TOEIC対策コースや講座などとスクールに通うと同時に英会話レッスンを受講するのも手立てでしょう。
目先のゴールだけにとらわれることなく、今一度、その先の「あなたがなりたい姿」を想像してみてください。
2-2. 今のあなたのレベルを知る
先程の例の通り、あなたの目標が「TOEICで700点を突破すること」だとします。まずは独学で学習しようと思い書店へ足を運んだとき、あなたは何点が目標の教材を購入しますか?
おそらく、「700点目標だから、700点突破できる教材を買おう」と思うのではないでしょうか。しかし、目標点よりももっと気にしなければいけないのが、今のあなたの実力です。例えば、プールで泳いだことのない子供が、いきなり平泳ぎで100メートルを泳ぎ切ることができるでしょうか。何を学習するにも、学ぶ順番はとても重要。基礎のない状態で難しい問題に手を出すのは、上達を遅らせる要因になります。
逆に、自分では初心者だと思っていても、実はある程度英語力がある方もいます。そんな方が入門書から学習を始めた場合、もうすでに知っていることを繰り返し勉強することになるので、時間の無駄になってしまいます。少しでも効率よく学習がしたいなら、まずは今のあなたの英語力レベルを把握することが大切です。
TOEICが目標なら、まずは一度公開テストを受験してみるのもいいでしょう。それが手間なら、公式問題集を解けば、だいたいの点数を知ることができます。
さらに手軽にということであれば、ネット上の英語レベル診断テストなど、無料で利用できる英語力診断サイトを活用してみてください。簡単に目安となる英語力レベルを知ることができます。
2-3. 基本を押さえる学習から始める
TOEICか英会話か、どちらの学習から始めるかで悩む前に、必ず習得してほしいものがあります。それが「英語の基礎」です。
すでに中・上級者の方であれば話は別ですが、英会話力を身につけるにしても、TOEICスコアを上げるにしても、英語の基礎なしでの向上はないと思ってください。
まずは基本のインプット学習から始めましょう。
2-4. 独学でも始めやすいのはTOEIC対策
先程お話した通り、初心者の方であれば、まずは基礎学習をしてください。それができた上で、独学でも始めやすいのは英会話よりもTOEIC対策です。TOEIC対策はインプット学習なので、教材さえあれば一人で学習を始めることが可能。書店ですぐに手に入れることもできるので、手軽ですよね。
他にもTOEIC対策用のアプリが多く開発されているので、一度試してみてはいかがでしょうか。ただ、短期間で確実に結果を出したいということであれば、スクールに通うなどプロ講師の手を借りることも選択肢の1つだと思います。
2-5. 英会話力を上げるにはアウトプットの練習が必要
先に述べたように、英会話学習においても、まず大切なのは基礎を学びインプットすることなので、その点で一人でも学習を始めることはできます。
ただ、英会話力の向上には「アウトプット=会話の練習」が必要不可欠。音読や「独り言を全部英語で言う」のような一人アウトプット練習法もありますが、実践的な会話力を身につけようと思ったら、どうしても話し相手が必要です。
人との交流が好きな方であれば、英語Cafeや外国の方が多く集まるようなイベントなどに足を運んでみる、ネットやSNSを通じて交流の輪を広げてみるのはいかがでしょうか。そこまでは……ということであれば、オンライン英会話や英会話教室への通学がおすすめです。
3.目的に合わせて受験すべきテストを見極める
ここまではTOEICテストについてお話をしてきましたが、実際にはTOEIC以外にも、英検やTOEFL(トーフル)等、英語力を測ることができる資格試験がいくつも存在します。
例えば、留学や大学進学先に英語力を証明したい、海外企業への就職を考えているとなれば、行き先となる国にもよりますが、TOEICスコアがあまり役立たない現実もあります。あなたが今置かれている状況において、本当に必要な資格試験は何なのか、しっかりと見極めることは大切です。
ただ、やはり一般的に就活など求人募集先や昇進などで評価されるのはTOEICですし、今の日本においては断トツで認知度もあります。年に10回、全国各地で開催されており、受験しやすいというメリットもあるので、英語力を測るにはもってこいの資格試験ではないでしょうか。
4. 最後に
結局、TOEICの勉強から始めても、英会話の勉強から始めても、英語を身につけるためにどっちがいいのか正解はありませんし、どちらから始めても間違いではありません。
この両者の能力がイコールではなくとも、片方で得た知識は、必ずもう片方の学習にも役立つという相関関係にあります。結局はあなたがする努力に無駄はないということです。
忙しいときほど、今回紹介した学習の手順をもう一度振り返ってみてくださいね。