2021年は大学入試にとって大きな転換の年になります。
従来のセンター試験が2020年で終了となり、大学入学共通テストが2021年から始まります。
この変更に伴い、大学入試で問われる英語力も大きく変容しようとしています。
よりコミュニケーションのツールとして役立つ英語が意識され、英語教育のあり方にもその影響は及びつつあります。
また、去年、大学入試に使用される民間英語試験の中にTOEICが加わる予定だったものの、そのTOEICの参加が取りやめになったことは大きなニュースとなりましたね。
今回は、日本で英語検定試験として圧倒的な認知度のあるTOEICと大学入試の関連性、そして高校生・大学生のTOEIC活用方法についてご紹介します。
1.TOEICが証明する英語力とは?
英語の検定試験には、TOEICをはじめ英検やTOEFL、IELTSなどさまざまな種類があります。
その中でTOEICを受験する意味を理解するために、まずTOEICという試験がどのような英語力を測定しているのか確認してみましょう。
1-1.英語でのコミュニケーション能力とビジネススキル
TOEICは「Test of English for International Communication」の略称で、日本語での正式名称は「国際コミュニケーション英語能力テスト」です。
その名称に含まれているように、TOEICの最大の特徴は「英語でのコミュニケーション能力」を測定するテストだという点にあります。
アメリカのテスト開発機関ETS(教育試験サービス)が試験開発・運営・結果評価を実施しており、日本での運営はIIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)が担当しています。
TOEICの設問はビジネスパーソンの日常生活を想定しており、「メールを読む」「会議の内容を聞き取る」など、ビジネスシーンで求められる英語スキルを測ることができるということで、企業が採用や人事考課の参考要素のひとつとして導入するケースが増えてきています。
1-2. 4つのTOEIC
TOEICは英語検定試験としての知名度が高い一方で、「どのTOEIC?」という質問をされると回答に困るという方も多いのではないでしょうか。
実はTOEICには4つの種類があります。
一般的に「TOEIC」と表現されているのは、リスニングとリーディングのスキルを測定する「TOEIC Listening & Reading Test」(TOEIC L&Rと表現することもある)を指しています。
それ以外にも、スピーキングとライティングに特化した「TOEIC Speaking & Writing Tests(TOEIC SW)」、初級・中級レベル版の「TOEIC Bridge Test」、企業・団体・学校などで受験する団体試験制度「TOEIC IP(団体特別受験制度)」があります。
近年では、スピーキングスキルを重視する傾向もあり、TOEIC Speaking & Writing Testsのスコアが求められる場面も増えつつあるので、「どのTOEICを受けるべきか」も確認するようにしましょう。
2. 大学入試・編入でTOEICは使える?
就職や転職といったキャリアに関連する資格としてのイメージが強いTOEICですが、大学入試の英語試験として利用されているケースもあります。
ここでは、これから大学進学する高校生にとってのTOEICの活用方法について確認してみましょう。
2-1. 大学入学共通テストには適用されない
2021年から大学入学試験の制度が大幅に変更されることが決定しました。そこで話題になったのが、英語と国語の試験形式です。
英語では、コミュニケーション能力を意識した試験への転換ということで、当初はリーディング・リスニングに加えて、スピーキング・ライティングを含める4技能を測る構成にするともいわれていました。
また、英語民間試験が活用されることも変更点に盛り込まれていましたが、結果として、2021年度に関してはTOEICを含む民間試験は導入されないことで決定しています。
TOEICが大学入学共通テストの英語試験として認定される可能性は当面の間かなり低いと考えられますが、大学受験でもコミュニケーション能力が重視される傾向は意識する必要があります。
2-2.入試・編入試験でTOEICを認定する大学
共通テストでは適用されていないTOEICですが、大学によっては入学試験や編入試験の一部として認定していることがあります。
日本におけるTOEICの運営団体である一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会が、公式ホームページで「大学・短期大学・高等専門学校の入学試験・単位認定における活用状況」として調査結果を発表しています。
この調査によると、全国で入学試験にTOEICの点数を認定している大学は427校あり、国公立大学だけでも88校あります。
基準スコアは、学校・学部によって400点前後とするものから800点近いスコアを設定するものもあり、そのレベルはさまざまです。
認定されている場合、「公開テストに限る」という指定が入っていることがありますが、これは団体受験制度の「TOEIC IP」以外を指しており、公開テストの中でも「TOEIC Listening & Reading Test」を指定していることが大半です。
大学入試でTOEICを利用して受験する方は、志望校それぞれの条件や指定について、事前に詳細を確認しておきましょう。
また、一般入試だけでなく、推薦入試においてもTOEICは役立ちます。
単純に英語力があるという証明にできるのはもちろん、面接や自己PRで、TOEICスコアを上げるために行った努力や、勉強法の工夫をアピールすることで、「そうやって英語ができるようになったのなら、この子は大学の勉強もできるようになるだろう」と高評価を得られるチャンスが生まれます。
2-3.高校生がTOEICスコアを取得するメリット
ビジネスシーンを想定した英語でのコミュニケーション能力を測定するTOEICは、中高生向けの試験ではないとよく言われています。
その一方で、先述の通り大学入学時や、それに加えて大学在学中も、TOEICを受験しスコアを取得しておくことで、多くのメリットがあるのも事実です。
大学入学試験で認定されているだけではなく、TOEICのスコアによって、授業料が割引・免除になるという大学まであります。
今後英語力への意識がさらに高まることを鑑みても、高校生の段階でTOEIC受験対策に取り組むことで、大学・大学院進学やその後のキャリアプランにも有利に働くと考えられます。
3. 大学在学中にTOEIC対策を行っておきたい理由
大学入学試験の一部としても効力を発揮するTOEICは、社会人はもちろん、大学受験生にとっても取得のメリットが多い検定試験であることがわかりました。
そして、TOEICには、大学生にも大きなメリットがあります。
ここでは、そのメリットを確認しておきましょう。
3-1. 単位認定している大学がある
先述したとおり、大学の中には、TOEICスコアを入学試験の一部として認定するケースがあります。それだけでなく、学部によっては、一定基準のTOEICスコアを取得することで英語の授業が免除となったり、一定数の単位と同等の扱いとして認定されたりしています。
例えば、法政大学経営学部では、TOEICスコア800点以上で4単位分が認定されています。
英語の科目は多くの大学で必修ですが、それが免除になれば、より自分の好きな科目を選ぶ幅が広がりますね。
申請手続きやその詳細については、各大学の生協や教務部に相談して確認してみましょう。
3-2. 就職活動で有利になる
近年、就職活動の様子も大きく変化してきており、いかに早い段階でキャリアを意識した行動を取れるかが、大学生にとっての課題になってきているともいえます。
そして、社会全体にグローバル化が進み、外国人労働者数が増加する中で、業種・職種を問わず英語力、そして英語でのコミュニケーション能力が重宝されるようになってきました。
ですから、大学在学中にTOEIC対策を始めて、スコアアップを進めていれば、就職活動を進める際に自分の市場価値を高めて有利になれるといえます。
大学入試が終わった後は英語の勉強をすっかり止めてしまう……という人も多いですが、大学受験で培った英語力をTOEIC対策によって維持・成長させられれば、就活においてもライバルに大きく差をつけられます。
3-3.「使える」英語を身に付けるための基礎力アップができる
TOEICのようなマークシート方式の英語検定試験では、実際の英語力が測れないとする考え方もあります。たしかに、TOEIC Listening & Reading Testで英語の4技能全体を測定することはできません。
ですが、この試験で問われる「リスニング力」「リーディング力」から、「英語でのコミュニケーションの基礎となる英語力」を判断することは可能です。
リスニングができなければ英会話で相手の話を聞き取れないのはもちろんのこと、リーディングのPart5で問われる文法・語彙力は、正確な英語を書く/話すのに必要不可欠ですし、読解力は「頭の中で英文を素早く処理するための基礎体力」といえます。
TOEIC対策の学習をすることで、「使える」英語を支える基礎力を着実に身に付けることができます。こうした基礎力がないまま英語を話したり書いたりの練習をしても、あまり上達は早くありません。
「TOEICはできるのに話せない」と問題視される人がいるのも事実ですが、そうした人も話す練習さえすれば、基礎力はあるのですから、確実に他の人より早く話せるようになります。
TOEICの勉強をする際は、その先にある英語でのコミュニケーションも見据えながら学習をしてみましょう。
4. 大学生におすすめのTOEIC対策勉強法
ところで、より効率的に効果を出すためのTOEIC対策を進めるためには、一般的な英会話の勉強や大学受験英語の勉強はベストとはいえません。
試験で求められる力を身に付けるには、やはり試験対策に焦点を当てた学習こそが効果的です。
ここでは、結果を出すためのTOEIC対策勉強法のポイントをご紹介していきます。
4-1. 受験英語からTOEIC英語への転換
大学受験で求められる英語もTOEICで求められる英語も基本は同じです。
ただし、入試問題でも大学ごとに問題傾向があるのと同じように、TOEICにも明確な傾向があります。
特に、TOEICはビジネスシーンを想定した設問に特化していることから、頻出する単語やトピックのジャンルもかなり偏っています。対策しなければ厳しい反面、対策さえすれば成果が出やすいといえます。
教材やセミナーを活用する場合は、「TOEIC特化」というキーワードを意識的に選択することで、より効率的に対策勉強を進めることができます。
4-2. 目標設定とプランを明確にする
大学在学中は、高校までや社会人からと比べて自由時間が多くなりますから、TOEICのような資格試験の勉強にはぴったりな時期です。
とはいえ、他の科目の勉強、サークル活動、アルバイトなど他にもやることがたくさんありますから、TOEIC対策を効率的に進めるには、明確なプランニングが重要になります。
なんとなくAmazonなどの人気ランキング上位の教材を買ってみても、取り組まないまま終わって結果として無駄な投資をしたということになりかねません。
「まず就職で有利になるといわれる730を目標とする」「まだ自分のレベルを把握できていないのでTOEICの模試を解く」など、現状とこれからの予定を踏まえた目標設定から始めましょう。
目標設定してから、毎日の学習量や模試受験のタイミングなど、大まかなプランを作成することで、「学習→定着度確認→復習→受験」という流れを意識することが可能になります。
4-3. 解答方法を工夫する
TOEICは、短時間で効率的に情報を処理するビジネススキルとしての英語力を測定する性質があることから、試験時間に対して問題数は多く、解答方法そのものにコツが必要です。
じっくり精読することより、要点をおさえてすばやく理解する癖を身に付けること。そして、迷いすぎずテンポよく解答し、分からない問題は考えすぎずに飛ばすといった方法に慣れることも大切になります。
最近では、無料アプリやオンラインコンテンツで、TOEIC対策問題や模試に挑戦できるものが多く入手できるので、得点力を意識した練習を積極的に取り入れていきましょう。
まとめ
今後、より多くの場面で重視されることが考えられるTOEICは、社会人だけではなく、高校生・大学生にとっても注目に値する検定試験です。
「TOEICは社会人が受けるものだし、自分にはまだ関係ないかな…」というのは間違いです。
英会話の基礎力を測る目安にもなりますし、参考書を使って独学で学習することもできますから、さっそく日程を把握して申し込んでみましょう。
学生の皆さんだからこそ、効率よく高スコアを取得して、これからのキャリア・ライフプランにTOEICを役立ていくチャンスがあるといえます。