「グローバル化で仕事でも英語力が重要になる」ということを、昨今あらゆる場所で耳にします。ビジネス英語力を測るテストとして最も認知されているのがTOEICですが、本当に就職で役立つのか実態はわかりづらいもの。
また、どれくらいの点数があれば就活で有利になるのか、基準が曖昧で目標設定がわからないという人も多いです。
今回は2019年に発表された最新のデータを参考に、TOEICは就職で本当に役に立つのか、目指すべきスコアはどれぐらいなのかを詳しく検証していきます。
Contents
1. TOEICと就職:企業が求める英語力とは?
TOEICと就職の関係を見る上で、今回はTOEIC Programを日本で実施・運営する「国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)」が発表した「英語活用実態調査 2019」のデータを参考にします。
企業・団体における英語の重要度や、TOEICスコアの活用方法が調査されているので、どの程度の英語力が就職において必要なのか読み取れます。
1-1. TOIECを参考にする企業・団体は約60%
「英語活用実態調査 2019」のP.14、「企業・団体が求めるTOEIC Programスコア」の「採用」のグラフには、人事採用にTOEICを使用している企業・団体の割合が出ています。
引用: https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf
「要件としている」「参考にしている」「新たに要件・参考とする可能性がある」の数値を合計すると、
・新卒採用:55.5%の企業・団体
・英語部署の中途採用:61.6%の企業・団体
半数以上の企業・団体がTOEICスコアを採用の参考にしていることがわかりますね。
1-2. 英語力を重視する企業は多いというデータ
同じく「英語活用実態調査 2019」のP.4、企業・団体が考える「今後のビジネスパーソンにとって重要な知識とスキル」と「社員や職員に不足している・今後強化する必要がある知識やスキル」両方のグラフで英語が1位です。
引用: https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf
高いレベルの英語力を持つビジネスパーソンの価値は高いと考えられているのですね。また、「国際的なビジネス感覚」「国際人としての知識・教養」もランクインしており、英語学習を通して国際的な感覚を養うのも重要です。
1-3. 就職・転職で目指すべきTOEICスコア
企業が採用基準としている具体的なTOEICスコアを公開していることはほとんどありません。ただ就活でアピールできる最低ラインとして、平均点は超えていることが望ましいです。
直近のTOEIC L&R公開テストの平均スコアは以下の数値です。
・第246回(2019年12月):595.4点
・第245回(2019年11月):585.5点
・第244回(2019年10月):597.5点
また、「英語活用実態調査 2019」のP.14、企業が採用時に「要件・参考とするTOEIC L&Rスコア(平均)」には以下のデータが出ています。
引用: https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf
・新卒採用:545点
・英語部署の中途採用:620点
以上の数値から、「TOEIC L&Rスコアで600点付近を超える」ことが最初の目標になります。すでにこのレベルを突破しているなら、さらにハイスコアを目指すことで就職・転職時のより強いアピールになります。
1-4. 企業別:TOEICスコアが有利になる事例
外資系企業や大手企業の国際部門の募集要項には、必要なTOEICスコアが明記されている場合があります。そのスコアを取得することで、少なくとも英語力はそれらの企業の基準を満たしていることをアピールできます。
公式にTOEICのスコアが必要と明記している具体的な企業名をここでは3社ご紹介します。
・楽天:入社時までに800点の獲得が必要。社内の公用語が英語
・日産自動車:入社までか入社後に730点の取得が望ましい。日本人がいない部署もあり、資料が全て英語の場合も
・パナソニック:国際広報担当は900点以上が必要
その他にも、任天堂など世界的な企業ではTOEICのスコアをエントリーシートに記載することが求められますし、人気企業の内定を勝ち取るためには、700~800点台以上の高得点を目指す必要があるのです。
2. TOEICスコアを取得するメリット
TOEICスコアは英語力を示すだけでなく、英語力以外の能力や入社後の査定などさまざまな場面でメリットがあります。ここではTOEICスコアを取得するメリットを3つご紹介します。
2-1. 昇格・昇進・報奨金の参考になる
「英語活用実態調査 2019」のP.14の「昇進・昇格」のグラフを見ると、約30~40%の企業・団体がTOEICスコアを昇進・昇格の要件・参考にしている、する予定があると回答しています。
引用:https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf
また、下の「報奨金・資格手当」のグラフを見ると、30%以上の企業が一定のTOEICスコア到達者に報奨金や手当を支給していることがわかります。
引用:https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf
入社後もTOEICスコアを伸ばし実用的な英語力を身につければ、より充実したキャリアを積める可能性が高まるのです。
2-2. 英語力以外の能力のアピールにもなる
TOEICスコアでアピールできるのは英語力だけではありません。他にも以下のような能力を示すことができます。
・目標に向かって勉強する計画性や勤勉さ
・向上心と忍耐力
・グローバル志向の高さ
あなたの学習力・人間性といった部分の強みを英語力に絡めてアピールできるのは大きなメリットです。
2-3. TOEICスコアが就職活動で有利になる業種例
高いTOEICスコアがあれば、英語力を要する業種への就職・転職を有利に進めることができます。特に以下の7業種が代表的です。
・商社:海外との商取引、海外駐在や出張の機会が多い
・メーカー:海外に拠点があり、輸出・輸入が多い
・物流:海外への荷物輸送
・旅行:海外旅行のアテンド、手配
・航空:国際線では実践的な英語力が必要
・金融:海外への投資、為替の管理
・小売:外国人観光者の増加に対応する人材が必要
もともとこれらの業種を志望している方はもちろんですが、そうでない方もTOEICスコアを取得することで新しい業種へのチャレンジも可能になります。
理系は文系に比べ英語の能力を問われないことも多いですが、実際は理系でもTOEICスコアは重要視される傾向にあります。それに理系の会社では英語が苦手な人が多いため、ライバルと差をつけるためにTOEICのスコアを持っていて損はありません。
3. TOEICスコアが役立たないケースとは?
グローバル人材が求められているとはいえ、TOEICはあくまでもひとつの資格。就職活動において決定的な要素になるとは限りません。ここでは、TOEICスコアがあまり役立たないケースを3つご紹介します。
3-1. TOEICスコアを重視しない業種例
志望業種がそこまで英語力を重視していない場合や海外展開をしていない企業では、TOEICスコアは大きなアピールにならない可能性が高いです。具体的には以下の業種が代表的です。
・官公庁や公社
・IT業界
・マスコミ業界
ただし、英語力を重視しない企業であってもTOEICスコアを獲得したという「学習力」や「経験」など、他の強みをアピールすることはできるのでまったく役に立たないわけではありません。
3-2. スコアが平均点より低い場合
取得したスコアが平均点より低い場合は、「ビジネスで使える英語力がない」「学習能力が高くない」と判断される可能性があるので、履歴書、エントリーシートに書かない方がいいでしょう。
具体的には先述した「600点」が目安です。スコアが600点未満の場合は、TOEIC以外の強みをいかして就職活動をしましょう。
3-3. TOEICだけで就職活動が有利になるとは限らない
就職活動ではさまざまな要素を鑑みて判断されるため、TOEICスコアが高いだけでは乗り切れません。考慮される要素としては以下のものが考えられます。
・大学時代の勉強
・研究内容
・学歴
・職歴
・学生時代のインターンや留学経験
・英語以外のさまざまなスキル
・経験
・エントリーシート
・履歴書
・面接の内容
上記のようなさまざまな能力や経験から評価される就職・転職活動では、TOEICはあくまで一要素と割り切りましょう。また同じ英語力でも、「実際に使っていた経験」や「実際に喋れるところ」を示せるとより強いアピールになるでしょう。
4. データから見る必要な学習・スキル
TOEICスコアが就職活動に役立つとしても、具体的にどんな学習が必要なのかイメージしづらいものです。ここでは具体的なデータを元に、必要なテスト対策や企業が求めている英語スキルを探ります。
4-1. 就職・転職にはTOEIC L&Rテスト対策を優先
英語力を測る試験はTOEIC L&R以外に、より学術的な内容を扱うTOEFL、日本国内試験の英検、TOEICでもスピーキングとライティング力をはかるTOEIC S&Wなどがあります。
しかし結論から言って、就職・転職対策にはTOEIC L&Rテスト対策を優先しましょう。現状はTOEIC L&Rがビジネス英語力を判断する方法として浸透しているので、他の試験の場合「実力が伝わらない」可能性もあるからです。
また、「英語活用実態調査 2019」のP.12にあるように、TOEIC L&Rの採用理由の78.9%が「認知度が高い」になっています。他の就活生との差別化を図るためには、認知度の高い試験の方がハイスコアが際立ちやすいです。
引用:https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf
ですので、まずはTOEIC L&Rの学習に集中しましょう。また、英検1級を取れるような実力がすでにある場合は、ぜひTOEICスコアも取得しておきましょう。
4-2. 企業が求めるのは「英語会議ができるスキル」
「英語活用実態調査 2019」のP.5に「企業・団体が目標とする英語スキルの水準」のデータがあり、その中で「英語で行われる会議で議論できる」が最多数を獲得しています。
引用: https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf
ここからわかるように、ビジネスで英語を駆使して会話する実践的なリスニング・スピーキング力は強力なスキルになるでしょう。実践的な英語力を身につけることで、結果的にTOEICスコアもアップします。
4-3. 800点以上は英語の日常化がカギ
「英語活用実態調査 2019」のP.11にビジネスパーソンの「英語の学習方法」のグラフがあり、ここに興味深いデータが掲載されています。
引用:https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/katsuyo_2019/pdf/katsuyo_2019_corpo.pdf
「スコア帯別の主な学習方法」を見ると、800点以上では「映画・動画」「ビデオチャットや友人との英会話」など、より日常的な生の英語を活用して学習する傾向があることがわかります。
「英語を日常言語に近づける」ことを意識することで、おのずとハイスコアが取れる英語力が身につくのです。TOEICは問題の出題形式が決まっているため、学習は独学でもでき、隙間時間で勉強がしやすいテストです。ぜひ日常に英語学習を取りに入れて、ハイスコアを目指してみましょう。
5. まとめ
TOEIC L&Rはビジネスでの英語力を測るために最も普及している試験です。多くの業種・企業でグローバルな人材が求められる現在、TOEICスコアは就職活動において有利に働き、間違いなく取得しておくべき資格のひとつ。
700~800点以上のハイスコアを獲得できれば、就職・転職活動はもちろん、入社以降のキャリア形成においても強みとなるでしょう。同時に、より実践的・日常的な英語力を意識した「使える英語」を身につけられれば、ビジネスパーソンとしてレベルアップできます。
TOEICは出題形式が決まっているため、テスト対策がしやすく、独学でも高得点が狙えるテストです。申し込みもオンラインで簡単にできますし、まだ一度も受験したことがない方はぜひ一度挑戦してみてください。
就活でもビジネスの現場でも、ライバルに差をつけるために、TOEIC対策をしっかりしてテストに臨んでみてくださいね!