カナダ留学体験記:英語だけではない「フランス語圏カナダ」の魅力(後編)

カナダ留学体験記:英語だけではない『フランス語圏カナダ』の魅力(前編)」の続きです。


僕、種茂真大はカナダ最古の大学マギル大学に留学していました。そのとき過ごした英仏バイリンガル都市「モントリオール」に焦点を当てて、「フランス語圏カナダ」をご紹介しています。「カナダ留学体験記:英語だけではない『フランス語圏カナダ』の魅力(前編)」のモントリオールの歴史と暮らしに続き、ここでは英語とフランス語の社会政治的闘争や、英語圏の中の言語的多様性についてお話します。

 

1. 英語 vs. フランス語: Québécoisの誇り

前編では、カナダ黎明期の歴史について言及しました。

ケベック州は、次いでやってきたイギリスとの主戦場となった過去や、フランス系カナダ人の人口が集中している土地柄もあってか、州の住民のフランス系アイデンティティへの誇りは特筆すべきものがあります。

カナダ連邦政府もこれを尊重し、ケベック州の公用語は、特例的にフランス語のみとなっています。

それが、モントリオールを巻き込んだケベック全体の言語政策にも影響を及ぼしているようです。

ケベック州 (Québec) 住民のことを、カナダではQuébécois (ケベクワ) と言います。

1960年ごろより、一部のQuébécoisの間では、ケベック州の主導権はフランス系住民が握るべきだという声や、州のフランス系の人口の割合の低下への危機感が高まっていました。

この流れを受け、1977年、「フランス語憲章」(Charter of the French Language) が制定され、立法行政や教育、経済、広告など広範囲にわたる活動にフランス語が使用されることが義務付けられました。

1985年以降、この憲章は徐々に緩和されていきましたが、ケベックのフランス語優先主義の盛り上がりはまだ余韻を残しています。

冒頭の写真は、まさにその余韻の影響を物語っている典型例です。

写真に写っているストリートサインのうち、Rue Universityという英語名の通りが消され、Robert-Bourassa Boulevardという、フランス人男性の名前に由来した通りの札が新設されています。

もともとモントリオールの南北を走るこの大きな通りは、2.1kmすべてがRue University と名付けられていました。

しかし、2015年3月を境に、同じ通りの南側1.2kmが、突然 Robert-Bourassa Boulevard へと名称変更されたのです。

この動きに対し、メディアが注目を寄せたのはもちろんのこと、僕の周りの友達も敏感に政治的な匂いを感じ取りしばらく議論の的になりました。

つまり、街の景観になるべく多くのフランス語を残そうとする、ケベック州政府やQuébécoisたちの意図が働いたのではないかという予想です。

これに似たところでは、ケベック州立であるモントリオールのマギル大学が、2015年度まで、フランスからの正規の学生の学費を他国からの学生の5分の1以下に優遇していたことが挙げられます 。

その額なんと年間30万円。

それほどまでに、ケベック州はフランス語やフランスアイデンティティの継承に、危機感を覚えているのですね。

ここでお伝えしたいのは、言語は決して単純なコミュニケーションツールであるだけではないということです。

時に言語は、民族の文化や歴史、アイデンティティを語る上で重要な働きをします。

とりわけカナダの中でもマイノリティであるフランス語が力を持つモントリオールでは、その色彩が強いようですね。

ぶつかる相手が英語のように強力な言語であれば、なおのことです。

モントリオールを旅する際には、そんな言語のまた違った一面を垣間見るのも面白いかもしれません。

 

2. 英語だけじゃない! フランス語圏カナダ

↑フランスらしいモントリオールのダウンタウンの一角

よく見ると、「停止」の赤い標識がフランス語で書かれています。

 

カナダといえば英語圏。

英語圏といえば公用語が英語

もちろんその通りなのですが、それはカナダのある一面しか捉えていません。

カナダの歴史はフランス抜きには語れませんし、フランス語やフランス文化は、現代のカナダまで引き継がれている財産です。

規模の面で見ても、モントリオールはパリに比肩する世界最大規模のフランス語圏都市で、世界的にも重要な地位を占めています。

このことからも、「フランス語圏」という視点からも捉え直して初めて、カナダの全体像が見えてくることが分かります。

もちろん、英語とフランス語だけではありません。

多様なカナダ原住民の言語や、スペイン語・イタリア語などのマイノリティ言語も多数存在します。

カナダは、英語圏というイメージとは対照的に、言語的にとても豊かな国なのです。

フランス語は、その筆頭例です。

ここで重要なのは、「英語圏」というイメージが、実は存在している多様性を覆い隠してしまっているかもしれないということです。

カナダがフランス語やフランス文化の視点から見直されて初めて実像を伴ったように、普段「英語圏」とだけ思っていた国や地域が、実は多様な言語文化を持っていたということが往々にしてあります。

例えば、アメリカは2015年、メキシコに次いで世界2位の、つまりスペイン本国以上のスペイン語話者人口を誇る国となりました。

英語はとても便利な言語ですが、世界各国はもちろん英語圏内にも多様な言語があることを忘れないでいたいですね。

 

3. まとめ: モントリオールが教えてくれる「英語圏」の多様性

 

いかがでしたか?

今回は、「英仏バイリンガル都市 モントリオールの知られざる魅力」と題して、英語圏カナダのもう1つの顔である、カナダの中のフランス語/フランス文化をご紹介してきました。

モントリオールを知ることで、英語圏とだけ思われがちなカナダの中に、今でもフランスの面影が強く残っていることを学ぶことができたのではないでしょうか。転じて、「英語圏」の中にも豊かな多様性があることに気づくことができるかもしれません。

英語学習に取り組んでいる間も、英語以外にも目を向け続け、本当の意味で世界を知ることができるといいですね。

 

<前編の記事はこちら>

カナダ留学体験記:英語だけではない『フランス語圏カナダ』の魅力(前編)

  
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